怪しい羊と迷えるオオカミ'S【完】


瑛太が手をもぞもぞしてると思ったら指輪を外していて


当然のように芹沢に渡すとロッキー犬が言ってた棚の上に置きに行った。


実に流れるような作業だ。


その間に瑛太は冷蔵庫に片づけはじめているんだから。



「今、すごいショックうけてるでしょ」


後ろでクククッと笑うこいつを背負い投げしたいぐらいだ。



食事の仕度が始まると2人なら2人


3人でも4人でもそれに合わせた役割分担が定着している。



サラダ作りやハンバーグに入れる玉ねぎなんかを切るのは3階チーム。


捏ねて形を作るのは5階チーム


ただし調味料、パン粉、タマゴを入れてくれるのは3階チーム。


ここを男と女って言えないのは、捨ててるやつが2名いるからだ。


瑛太が焼けたハンバーグを皿に乗せたら俺が特製ソースをかける。


このソースは4人で味見しまくり作ったもの。


「下にビール置いたままだった」


ロッキー犬が冷えたビールを持ってきた。



いつの間にかちゃんと冷やしたグラスを冷蔵庫から出してくる芹沢。



テーブルの上のセットもあっという間に完了してしまい


「いただきます」で4人で合掌



「お替わりは?」


これは新しく加わった制度。


瑛太と2人の時には存在しなかった。


食いたきゃ自分でよそう。



しかし3階が加わるとこの「お替わりは?」という何とも心地いい問いかけが聞こえる。


これを俺と瑛太は悪魔の囁きと呼んでいる。


心地いい問いかけなのに悪魔の囁き



「いる」


そう答えてしまうからだ。


2回も聞かないでほしい。


何となく「もういい」と断るのが悪い気もして


「いる」と言ってしまう。


「半分ぐらい?少し?」


最近そういうオプション的なものがついたので俺たちは太ったのかと後で心配になる。





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