怪しい羊と迷えるオオカミ'S【完】
一方あの二人はどうしていたかというと
庭を散歩しながらいつもの調子。
だが、洗い髪をアップにしている白い項が目に入ると
「おい、ロッキー。俺は今お前が女に見えた」
「復活の兆し?おめでとう。座敷王子」
「お前が役に立った」
口元に小さく笑みを浮かべて笑い合う。
スエットじゃない柊哉の姿もまた新鮮で
「おい」
呼ばれて振り返った時に見た姿に
「お…王子…今、男だった!イケメンでした」
「ドキドキしたか」
「はい!ドキッ!キュンッって感じがはっきりと」
「お前も復活の兆しだ」
またも顔を見合わせては小さく笑い合う。
だが、復活の兆しが見え始めると部屋に入ってからがぎこちない。
「て…テレビでも見る?」
「そ…そうだな」
内容なんかよくわからないけど出演者が笑えば遅れて笑う。
「ね…寝るか」
「そ…そうね」
こちらはツイン。
「どっちがいい」
「それじゃこっち」
背中を向けたまま
「おやすみ」
「おやすみ」
心の中は、どちらも同じ
やべぇ…眠れねぇ
やばいって。ドキドキが聞こえちゃう
あいつは犬だ あいつは犬だ
男じゃない 男じゃない
繰り返される言葉が眠りへの呪文
何度目だかわからない頃、朝陽と入れ替わるように眠りについた。