怪しい羊と迷えるオオカミ'S【完】
「ここの住人です。出勤するとこなんです。本当にすみません」
「ほんとうに住人?何号室」
「そ…それは言えません」
この不審者が俺を警戒?
ぶつかった男はさらに不機嫌。
「じゃあ 管理会社」
慌ててバッグの中からスマホを取り出し
「これこれ、フォレスト株式会社」
家の鍵はこれとばかりに下を向いたまま上に手をあげて大きく揺らす。
管理会社なんか俺知らねぇって。
揺れる鍵は、少しばかり特殊な形。
普通より分厚くてやけに重い。
「間違いなさそうだ。行ってよし」
「ほんとうにすみませんでした。ありがとうございますッ」
三度頭を下げるとカニの様に横にササッ
そのまま逃げるように走り去った。