怪しい羊と迷えるオオカミ'S【完】


誘うなとも言えねぇしな―――。


座敷童であっても人柄に好感はもたれていた。


だから誘わないという事はなく声はかけられている。


だがそれはあくまでも同僚としての社交辞令的な部分もあって


「やるけど来る?」的な感じ。


芹沢自身も普通に飲めるのにまれに出ても1時間ほどで帰っていたらしい。


飲み会が嫌いという女の子もいる。


そうだ。人間を変化させるのが酒。


仕事中とまったく違う雰囲気を醸し出すのが飲み会。



それでも飲み会で親睦を深めていくという事も社会人で大事なことだ。


 
仕事をしながら聞き耳をたててる俺は生まれたてのヒナを守る親鳥状態。


今日飲み会があるとかそんな話ではなさそうなのでホッと息を吐き手元の書類に目を落とす。


しかし頭の中は、その壁をあいつは越えられるのか?


上司の俺が参加ってわけに行かねぇんだよ


お座敷の隅で震えている座敷童が目に浮かんでまいった。
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