怪しい羊と迷えるオオカミ'S【完】
みんなの目が芹沢の姿に見慣れれば見慣れるほど不安要素も感じながら週末まで監視体制を強化していた。
当然瑛太にもその事は伝えた。
「あぁ―。大きな壁だよその飲み会っての。でも適当にかわせるようになる必要もあるよな。まぁ俺個人としたら仕事じゃねぇんだから出なくていいって言いてぇけどよ」
「ロッキーぐらいうまく渡っていけりゃいいんだけどな」
「あいつさ、さすが座敷童の親友って感じで珍種だよな」
「珍種過ぎんだろ。性格もあるけど物事に対しての頭の回転がいいんだわ。それだけ社会にもまれてきたって事か。芹沢を守るうちに身に着いたのかもな」
名前だけで一度も見たことがないコタって男のことも聞いてみた。
そしたら、柴犬みたいな人懐っこいやつって言われて想像できた。
その柴犬は、安心して任せられる瑛太がいるから仕事に集中できると言って5億年も先なんて言わず俺ら人間が生きている間にお目に掛けたいと言ったそうだ。
なかなかコタってやつも面白い事を言うなと思った。
「あ、柊ちゃん。俺、明日マコと出てくるわ」
「芹沢じゃなくてロッキー?」
「そうだよ。だから淋しい柊ちゃんの相手は俺の美祈が相手する」
「お前、名前で呼ぶようになったのか」
「美祈、瑛太さんってどうよ」
その自慢げな顔は何だ。
まぁな…コトの最中に
『座敷童』
『もじゃ男』
これじゃ萎えるわな。
「明日の昼ぐらいから夕方まであいつは、座敷童スタイルに戻る。そんで柊哉のお相手だ。どうだ嬉しいだろ。俺とあいつからの誕生日プレゼントだ」
「は?」
は?なんて言いながらも微妙に嬉しくも思う。
何と言っても先に見つけたのは俺だ。
あのスタイルで怪しい動きとか最高じゃねぇか。
「ジムに連れてっていい?」
「柊ちゃんがしようとしてる事がわかって俺はすでに笑いそうだ」
ってことは、ロッキーへのプレゼントに瑛太が写真でも撮ってやるってとこか。
俺は30の誕生日プレゼントに座敷童との時間という何とも奇妙で楽しいプレゼントをもらった。