怪しい羊と迷えるオオカミ'S【完】
「今度は、な…何」
確認するために顔を動かすと
「じっとして」
ガシッと顔を抑えられた。
髪をカットされるの?美容院に行ったばかりだって。
男の人も出てきてあたしの頭の上で何やら話し合い。
それが終わると人の顔を失礼なぐらい凝視して
あぁ気持ちいいって声が出そうなぐらい丁寧な指使いでメイクを落とした。
化粧水がつけられるのも雑なあたしと違ってソフトタッチ。
男の人に肌を触られるなんて久しぶりだわ。
いけない。また煩悩…。
あっち向けこっち向け目を閉じろと23歳になったばかりの乙女をスキなように操った。
「目をあけていいよ」
言われて目を開けたあたしが見たものは
「誰この美女」
「化粧映えする顔だよね」
「それ素顔が地味ってことですか」
思わず吹き出した。
「そういう事じゃなくていろいろ変わる要素を持ってるっていうのかな」
いつもよりずっと濃い目のメイク。
この顔で銀行勤めは無理でしょうって思いながらも綺麗になった自分は嬉しい。