怪しい羊と迷えるオオカミ'S【完】
「お疲れさま。お誕生日なんですって?氷室さんに撮ってもらえるなんていいわぁ」
「恥じらいながらってとこが何とも言えずいい表情で見てるこっちまで笑顔になってたよ」
もらった写真のデータを開くと
「見て!すごいッ もう雑誌モデルだね。え?女優?」
スタイリストだとわかったお二人に見せると
「いい!これいいな。あとで氷室さんにもらってもいい?」
「どうぞどうぞ。必要ならサインします」
大笑いだった。
有難うってお礼を言ったけどお礼を言うのがテレくさく感じた。
着てきた服が入った紙袋が渡され
「服は氷室さんからプレゼントだって」
「もう、最高の男!」
「惚れるなよッ」
コートを着るのが惜しいと思いながらもじゃ男と一緒にビルを出た。
次はバーに行くぞ。
「ヒャーッ」
足をバタバタして喜ぶあたしに落ち着けよアホって吹き出したけど久々に自分が女って事を嬉しく感じた。
バーと言えばダーツバー。
だけどもじゃ男が連れていってくれたのはジャズの流れるもっと大人の雰囲気。
「極上の女はこういうとこ来いよ」
カウンターに並んで座る。
「バーボン」
「あたしも」
「おい、ここはカクテルにしろよ」
そう言ってあたしにはアラスカを頼んだ。
「強い酒だ。安心しろ」
「酔わせてどうするつもりッ」
「酔わねぇから強いのだ」
カツンとグラスをぶつけて乾杯。
「煙草いいか?」
「いいよ全然ってか 吸うんだ」
「何でだかお前らといると吸わなかった」
煙草の煙を燻らせるもじゃ男がいつもとは全然違って大人だと思った。