怪しい羊と迷えるオオカミ'S【完】
「瑛太さん」
美祈の声が聞こえ振り返った。
「きゃーッマコすっごい大人っぽくて綺麗。もう綺麗過ぎてどうしよう」
「もじゃ男に魔法をかけられて、今あたしすっごい女なの」
一緒に来た座敷王子も美祈に言われたんだろう。
いつもの男捨ててますって感じじゃなくてお洒落で美祈の言ってた課長がそこにいた。
「お…お前、すげぇ変わりよう」
「惚れても無駄よ。世界はあたしのものだから」
「中身は変わってねぇな」
クスッと笑うのさえ男を思わせた。
「じゃ!あとはお二人で」
「え?」
「男と女を取り戻していただくのが本当のプレゼント」
「まぁ、付け焼き刃だけどいいだろッ」
美祈の肩を抱くとあたしと座敷王子を置いて店を出て行った。
もじゃ男が座っていた席に王子が座り
「バーボン」
「お前もかい」
プッとお互い吹き出す。
「瑛太はバーボンだろ?ロッキーもあたしもとか言ったか」
「言った言った。そしたらここはカクテルだって」
スマホを出して撮ってもらった写真を見せた。
「家に寝転がってる珍獣じゃねぇな」
「あたしは並の干物じゃなかったってことよね」
会話の内容はどうであれ、声のトーンはいつもと違う。