怪しい羊と迷えるオオカミ'S【完】
ついて来い。どこまでも
柊哉の希望の炬燵がリビングに登場して数週間。
「ねぇ足そっち側にして」
「お前そっちなってロッキーお前まじで何でここにいる」
「だって美祈のとこ炬燵ないんだもん」
静かになったと思えば猫のように炬燵で眠っているマコをこいつは犬なのか猫なのかまったくけったいな奴。
やっぱ珍獣だよと思いながらも可愛さすら感じるようになった。
それはあくまでも珍しい生き物としてで女としては、点数すらつけられないと思っている。
そんな事をマコに言ったら反撃の怖さを知っているから柊哉も言わない。
1人でいるのは退屈。
だけど美祈と瑛太の時間って事も考えるから必然と行先はココになるのだろう。
夕食の時間は4人で食事の時もあればあっちはあっち。
そしてなぜかこっちはこっちで文句を言い合いながらも2人で食べる。
「熱っ」
「バカ気をつけろ」
料理中にフライパンでやけどしたマコの手を掴み水道の蛇口で冷やし
「もう座ってろ」
「ここに心臓があるみたいにドクドク言ってる。痛ぁぁぁ」
「大丈夫か?」
やけどの状態を見て薬を塗ってやる。
「ねぇ…どうせならもっと綺麗に包帯巻いてよ」
「全身巻いちまいてぇぐらいだ」
「それ面白い。あははは」
コツンと頭を小突こうが、無反応だ。
この手じゃ食べられないだとかこんな包帯の巻き方が悪いと文句まで言われ、その出来栄えを見せられればおっしゃる通りとあけてる口にご飯をせっせと運んでやる柊哉。
「同じおかずばっかりじゃ嫌だって」
「うるせぇな。どれがいい」
「それ」
食事も終わりお茶も飲み、長いこと二人でテレビも見続ける。
じっと瑛太の帰りを待つが最近は帰りが遅い。
瑛太が戻らなければマコは美祈の部屋へ戻れない。
家に帰れば済むのに、こんな寒い時間に嫌だと言って首までこたつに潜り込む。
柊哉もその気持ちもわかるから追い出せない。