怪しい羊と迷えるオオカミ'S【完】


何を我儘な事言ってんだって思うけど瑛太の顔はマジだ。


自分の夢に想うほど愛する場所へ最愛の人を連れていきたいって気持ちは、まあわかるけどな。


結局のところすべては芹沢が決めること。


せっかく就職した会社を辞めて北欧に行くというだろうか。


こいつと人生を共にする覚悟じゃなきゃいけないだろう。


23歳で初恋。自分の人生が大きく変化しトラウマを克服しつつある今、美祈にとっては離れたことで別れが来ても今までとは違う未来が開けるだろう。


初恋は実らないもの。


淋しくも残酷なようだがそれが現実なんだろう。





それから何日も瑛太は考え込んでいた。


外出しても戻れば幸せが全部飛んでいきそうなほどの溜息。


行かない。行けない


そう言われてしまうのも心が折れそうなんだとか。



あと3日でアラスカへと出発するというのにまだ悩み中のようだ。


何を思い立ったかコートを着ると


「柊ちゃん。明日、美祈休ませるから。有給にしてやって」


「おい。それは本人が」


「一生のお願い」


物凄く真剣な顔をして出て行った。



「やれやれ」


俺だって溜息ついちまうぞ。


そんなに悩むお前を見た事もねぇぞ。



そしていつ戻ってきたのか朝起きるとテーブルの上にはメモ。



有給頼むな。

明日の夜には死んでも戻る。




決心したってことか。

芹沢、大丈夫か…。




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