怪しい羊と迷えるオオカミ'S【完】


柊哉に追いつかれないようエレベーターの▼ボタンを連打する瑛太。


いや待てエレベーターで一緒になっちまうか?


気遣い気遣いとほくそ笑みながらわざわざ5階から階段で降りる。


まぁこれでいなくてもコンビニに行くだけだ。


階段を降りて1階のエントランスに抜けるドアを静かに開ける。






危ねぇ。エレベーターに乗ってたら遭遇してた。


エレベーターの前ですでにやってるやってる。


コソコソカサカサとゴキブリかって!


足を進めてからも右見て左見て


おっと危ねぇ、後方も振り返るから慌ててドアの陰に隠れる。




エントランスを出てからもやるってことは外で前方に発見ってなことがあったんだろうな。


柊哉じゃないがその一生懸命さに頑張れと言ってやりたくなる。



速足で歩く美祈の後ろを歩く瑛太。


そこまで急がなくたって平気だろうに。



健気にも思えて思わず


「おぅ。今から出勤か」


後ろから声を掛けた。


すると面白いぐらいピタッと足が止まり後ろを振り返った時の目。




身体まで後方に反りかえりながら



「は…はいッ」


無視しねぇとこがエライじゃねぇか。


立ち止まっているから美祈に瑛太は追いついた。


「頑張ってこいよ」


「あ…有難うございます」


勢いよく頭を下げるとクルッとこれまた凄いスピードで向きを変え逃げるように走って行った。




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