怪しい羊と迷えるオオカミ'S【完】
ズリズリ ズリズリ後ずさりをするのは本能
「おい。大丈夫か」
「す…すみませんッ」
瑛太の前の美祈は、目の前にいた事すら悪いという感じで身体を竦めている。
「何も、怒ってねぇよ」
床に落ちたエコバッグを拾ってあげると
「ほらっ」
美祈の方へ差し出した。
俺はここまで恐怖心を与えるのか…
瑛太は相当落ち込んだ。
「この間の朝は悪かったな」
「いえ…ぶつかったのはこっちで」
話しながらも視線は床を見ていて目を合わせようとしない。
「傷つくから怯えるな」
「は…はい…」
怖々エコバッグを受け取ると頭を下げて
入れ替わりでエレベーターに乗った。
扉が閉じるとホッとして溜息が零れる。