怪しい羊と迷えるオオカミ'S【完】


時間になると柊哉は出かけて行った。


それから2時間ほどして瑛太もスタジオの方へ向かうために家を出た。


エントランスを通るたびにあの怪しい座敷童の姿を思い出す。



自然と口元が緩むのは、恐らく柊哉も同じだろう。


教えてあげたいが教えたくない。


教えたくないけど教えたい。



もっとも瑛太は知ったあとの美祈の行動を思えば


平気だと言ってやる事もフォローしてやる事も出来ないわけで


上司と部下という人間達に任せるしかない。



別に引っ越したって本人が決めたこと。


そうは思えない二人の男。



美祈が隠れるのと同じように柊哉も瑛太も出会わないよう細心の注意を払い続ける。


それはまるで子どもの頃に遊んだかくれんぼのようなものだが、この場合鬼は誰なのかっていう答えが出ない。



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