怪しい羊と迷えるオオカミ'S【完】


DVDを借りるとそのままスーパーに寄って夕食の買い物。


今夜は手早くパスタにしよう。


必要なものをカゴの中へ入れて買い物を済ませると、習慣となっている警戒心は、弱めることなく自宅へ向かって歩き始めた。


コンビニの前を通り角を曲がる。


マンションが近づくと今日も会えないという落胆も習慣になりつつあった。


自然と視線が下へと落ちて俯き加減で歩いてしまうのは、そのせいだ。


大事な場所なのに警戒心より落胆の方が大きくなっていたから。



前から歩いてくる人の気配にぶつかってはいけないと顔を上げると


「あっ」

「あっ」

お互い声にはならないが瑛太の口の動きは確かに『あっ』

美祈の目の動きも『あ』


相手の存在を確認しているという事だ。



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