怪しい羊と迷えるオオカミ'S【完】
「新作とか面白そうなの出てた?」
何を借りたか聞くのは嫌がるかなと瑛太は答えの範囲を広げた。
「新作がたくさん出てました。私は何か見たくなって北極と南極の野生動物と生まれ育った町に似てるのを借りたんです。だからお勧めできそうなものじゃないんです」
何だよ。こんなに話しをするんじゃねぇか。
それもそのはず。
会ってしまって慌てはしたものの、心に引っかかっていたもう一度謝るという事が出来て嬉しいわけだ。
そして瑛太が怒っていない事もわかってホッとしている。
そして乱暴な感じの話し方なのに美祈にはとても答えやすく話しが振られ緊張がとけていくのを感じていたからだ。
「あれか、やっぱほらシロクマが可愛いとかそういうやつか」
「それもあります。でも絶対に行けないとこだから見たいと思って…」
「俺、どっちも行ったよ」
「え?」
「俺、カメラマン。フォトグラファーなんだ」
「えーーーッ」
そんなに驚くほどの事かってぐらい驚いていて
「今度写真見せてやるよ」
何気なく言ったのに
「是非お願いします。見たいです。すごく見たい」
まるで熱烈なファンのような姿だった。