怪しい羊と迷えるオオカミ'S【完】


瑛太のシャッター音はすれども美祈からは聞こえない。


フッと見ると写真を撮っている瑛太を見つめている。


「そんな見つめられると照れんだろ」

ほんの冗談で言っただけなのにマスクをした顔が赤くなっているのがわかるぐらいだ。


プイッと後ろを向くと歩きだしカメラを手にして撮り始めた。



それからしばらくの間は、瑛太も美祈も夢中でシャッターを切った。


様子を聞こうとカメラを降ろすと美祈はもう写真を撮るのをやめていた。

見るとバッグの中に戻されているデジタルカメラ。



田舎の景色の中で座敷童が楽しそうに動いていて瑛太は再びカメラを構えた。


ファインダーを覗くとそこに見えたのは笑っていると明らかにわかる姿。


離れている事に安心しているんだろう。

望遠レンズでその表情を見ると風を感じ瞼を閉じ

足元の花に笑みを浮かべる。


カシャッ
カシャッ


瑛太は自然とシャッターを切った。


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