怪しい羊と迷えるオオカミ'S【完】
瑛太はビールを飲みながら真面目な顔で柊哉に語り掛けた。
「なぁ柊ちゃん。俺が柊ちゃんに秘密もったらどう思う?」
あまりに真面目な顔だったので真剣に聞いていた柊哉は笑いが止まらない。
「瑛太、秘密ぐらいいくらでも持て。俺なんかいっぱいあるぞ」
「ガーンまじ?」
「瑛太はわかりやすいから秘密が持てないんだよな。根が正直なんだよ」
座敷童の事って言ったら柊哉は同じ言葉を言うだろうか。
瑛太は秘密がある故そんな事が脳裏に浮かぶ。
「なぁ、俺、なんだか座敷童の呪いにかかったみたいなんだ」
それを言っただけで柊哉はもうビールのグラスをテーブルに置き身体を震わせて笑いだした。
「お前な、座敷童の呪いって芹沢は俺の部下だからな」
「そうなんだけどよ。俺、今日の撮影に座敷童連れて行った」
瑛太の言葉に柊哉は笑いが止まった。
「え?」
「変だろ?俺がだよ。俺が座敷童連れていったんだよ」
「芹沢も行くって言ったのか?」
「当り前だろ。無理になんか連れていかねぇよ」
美祈に言われた秘密は柊哉にも言えないけれどそれ以外は話すべきだと判断した。
いや話してこの不可解な行動の理由を知りたいわけだ。