怪しい羊と迷えるオオカミ'S【完】


だけど、どんな人かと聞くと

温かくて優しい人とべた誉めだ。



未だかつてこれほどべた誉めする話を聞いた事がない。




「一緒にいて楽しい?」

「楽しい」

即答だった。



自分と違っていつも堂々としている瑛太。

はっきりと言う言葉が時々乱暴にも思えるが話せば話すほど温かさを感じて今日は優しい表情を何度も見た。


もじゃもじゃの存在が警戒する人から優しい人へと美祈の中で変化しているのを美祈は感じていた。



「もじゃもじゃなのにね、おでこの傷に薬つけてフーフーッって息吹きかけてくれるの」

「そんなに接近したんだ」

マコに言われて急に顔が赤くなる。


「あっ…」


今気づいたように突然会話が止まり電話口できっと赤くなっているんだとマコもクスッと笑いが零れる。


「座敷童にそんな事してくれる人ってそういないんじゃない?」


「会社の人たちも話しかけてくれるし、親切なんだけど…どこか行こうって誘ってくれたのは、もじゃ男が初めて」


「もしかすると誘われてても、自分が行くって言ったのが初めてなのかもよ」


マコの言葉に再び会話が止まる。


それはきっと今までを思い出しているんだろう。


「そうかもしれない。もじゃもじゃパワーだね」

「もじゃ男は美祈に元気と勇気をくれるんだね」





マコは美祈と話しながらそのもじゃ男に会いたくなった。


お礼すらいいたい気分。


「コタも聞いたらきっと喜ぶよ」

「コタちゃん元気?」


それからは、近況報告をかねた話しで盛り上がり

来週末に会おうと約束をして電話を切った。




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