怪しい羊と迷えるオオカミ'S【完】
週明けの月曜日
すっかり元気を取り戻した様子の美祈に安心する柊哉。
瑛太のお蔭ってやつか?
同僚に対しての接し方に変わりは見られないが頬杖をつくことも大きなため息をこぼすこともなくなった。
代わりに家では瑛太の方が大きなため息をつき
呪いだとか呪縛だとか
上司のお前がしっかり見てやらないから俺が気にかけてしまうと柊哉の顔を見るたび訴える。
「お前、スキなんじゃねぇの」
「違うって。あいつは座敷童だって」
もっとも瑛太の付き合ってきた女とはタイプが違い過ぎる。
それにスキな子が出来たら聞かずとも自分から言ってくるやつだ。
美祈の状態を目で追い確認する自分も呪いにかかってるのかもと柊哉も苦笑いの日々が続いていた。
その間にも、エントランスで美祈と瑛太は何度か出会った。
座敷童であったり、そうでなかったりだがどちらも瑛太には美祈とわかる。
笑顔とともに会釈だけですれ違うこともあれば、立ち止まって話す事もある。
もう怖がられる事も逃げられることもそして避けられることもないのが嬉しい瑛太。
本当の自分を知っても嫌うことなく笑顔とともに楽しい話しを聞かせてくれる事が嬉しくて仕方ない美祈だった。