③愛しのマイ・フェア・レディ~一夜限りの恋人~
昼休憩__
「ただいま~っと……お?」
「熊野っ、ちょっと来い!」
出先から戻ってきた熊野主任は、デスクにつくなり大神課長に捕まった。
「え、なんすか課長、え?」
そのまま、屋上まで引っ張られた熊野。社の屋上は、近年禁煙化が進んだオフィスの、喫煙所になっていた。
昼休憩のいまは、十数人が疎らにめいめいの一服を楽しんでいる。
大神は、上水タンクの影まで熊野を引っ張って、ようやく手を離した。
「何なんだよ一体。俺、メシまだなんだけど」
二人は同期の友人同士だが、普段会社で、職責で上司である大神に、熊野は決して馴れ合った態度はとらなかった。
ただでさえ若い管理職の大神が、年上の社員に舐められないよう、然り気無く配慮しているのだ。いい男(ヤツ)だ。
しかし今は昼休憩で、人の目のない屋上の影。熊野は、いつもの調子で問いかけた。
「熊野、実はだな…」
大神は事の経緯を説明した。
「あっはっは…、何だよそれ」
熊野は腹を抱えて笑っている。
「良かったじゃねえの、トーコちゃん。叱られずにすんで、その上御飯まで奢って貰えるんだから」
大神は大きな溜め息を吐いた。
「フー、お前。全く解ってないな。
いいか?食を供にするというのは、寝も供にする、ということだ」
「はあ?何だそりゃ。
んなワケないだろ、社長だぜ?
こう言っちゃナンだけど、トーコちゃんじゃあ役不足…」
「ただいま~っと……お?」
「熊野っ、ちょっと来い!」
出先から戻ってきた熊野主任は、デスクにつくなり大神課長に捕まった。
「え、なんすか課長、え?」
そのまま、屋上まで引っ張られた熊野。社の屋上は、近年禁煙化が進んだオフィスの、喫煙所になっていた。
昼休憩のいまは、十数人が疎らにめいめいの一服を楽しんでいる。
大神は、上水タンクの影まで熊野を引っ張って、ようやく手を離した。
「何なんだよ一体。俺、メシまだなんだけど」
二人は同期の友人同士だが、普段会社で、職責で上司である大神に、熊野は決して馴れ合った態度はとらなかった。
ただでさえ若い管理職の大神が、年上の社員に舐められないよう、然り気無く配慮しているのだ。いい男(ヤツ)だ。
しかし今は昼休憩で、人の目のない屋上の影。熊野は、いつもの調子で問いかけた。
「熊野、実はだな…」
大神は事の経緯を説明した。
「あっはっは…、何だよそれ」
熊野は腹を抱えて笑っている。
「良かったじゃねえの、トーコちゃん。叱られずにすんで、その上御飯まで奢って貰えるんだから」
大神は大きな溜め息を吐いた。
「フー、お前。全く解ってないな。
いいか?食を供にするというのは、寝も供にする、ということだ」
「はあ?何だそりゃ。
んなワケないだろ、社長だぜ?
こう言っちゃナンだけど、トーコちゃんじゃあ役不足…」