③愛しのマイ・フェア・レディ~一夜限りの恋人~
「貴方といっしょに過ごした…」
「いよお、トーコちゃん!!」
刹那。
聞き覚えのある大きな声が燈子の返事を掻き消すように、宵闇に響いた。
ほぼ同時に、植え込みからガサガサっと音がして、大きな影が二つ、ぬっと現れた。
「いや、奇遇だなあ、ホント。な、大神?な?」
「くまのさんに……大神…課長?」
目を丸くする燈子の前に、社長がすっと立ちはだかった。
「どうしたんだね、こんなところで」
熊野は大袈裟に驚いてみせた。
「ややっ、これはこれは、社長ではありませんか~~。
済みませんっ、お楽しみのところ……じゃねえや、お取り込み中の…あれ、これも違う」
(おいコラッ大神、なんとか言えよっ!こういうのはフツー、お前の役目だろ?!)
「………」
ペコペコと頭を下げながら、苦しい言い訳をする熊野の横で、大神は不貞腐れたように黙りこくっている。
「いやいや、近くの店でこいつと飲んでて…飲み過ぎちゃいまして…ちょっと散歩をね。
あ、同期なんですけどね、俺たち…
いや~偶然だなあ、ホント…え~っ、赤野?!なんつって…」
「そうかい。君達は仲が良いんだね…」
チラチラと腕時計を見ながら、会話を切り上げようとする社長に、中身のない世間話を引き延ばす熊野。
その傍らには、さっきから何か言いたそうに燈子をチラ見しては、ぱっと目を逸らす大神。
そんな様子をホケッと眺めていた燈子は、不思議な感覚に囚われていた。
身体に巻きつていた緊張の糸がジワジワと解けていくような…
そして。
自分でも全く予想外の行動を取ったのだ。
「いよお、トーコちゃん!!」
刹那。
聞き覚えのある大きな声が燈子の返事を掻き消すように、宵闇に響いた。
ほぼ同時に、植え込みからガサガサっと音がして、大きな影が二つ、ぬっと現れた。
「いや、奇遇だなあ、ホント。な、大神?な?」
「くまのさんに……大神…課長?」
目を丸くする燈子の前に、社長がすっと立ちはだかった。
「どうしたんだね、こんなところで」
熊野は大袈裟に驚いてみせた。
「ややっ、これはこれは、社長ではありませんか~~。
済みませんっ、お楽しみのところ……じゃねえや、お取り込み中の…あれ、これも違う」
(おいコラッ大神、なんとか言えよっ!こういうのはフツー、お前の役目だろ?!)
「………」
ペコペコと頭を下げながら、苦しい言い訳をする熊野の横で、大神は不貞腐れたように黙りこくっている。
「いやいや、近くの店でこいつと飲んでて…飲み過ぎちゃいまして…ちょっと散歩をね。
あ、同期なんですけどね、俺たち…
いや~偶然だなあ、ホント…え~っ、赤野?!なんつって…」
「そうかい。君達は仲が良いんだね…」
チラチラと腕時計を見ながら、会話を切り上げようとする社長に、中身のない世間話を引き延ばす熊野。
その傍らには、さっきから何か言いたそうに燈子をチラ見しては、ぱっと目を逸らす大神。
そんな様子をホケッと眺めていた燈子は、不思議な感覚に囚われていた。
身体に巻きつていた緊張の糸がジワジワと解けていくような…
そして。
自分でも全く予想外の行動を取ったのだ。