泣き虫とヒーロー ~約束の四つ葉のクローバー~
何の前触れもなく
ガラッと開いたドアに目を向けると、
ドアを押さえている青いリストバンドをした筋肉質の腕。
そう、
郁人が立っていた。
泣き崩れる私を見て驚いた表情をした郁人は
後手にドアを閉めると、
遠ざかっていく足音。
私は気付けば走り出していた。
足の後遺症であまり負担はかけられないけど、
今だけは別だ。
今行かないときっと後悔する。
「奈緒!
がんばれ!」
麻友の声で、私は全速力で郁人を追いかけていた。
歩くのが早い郁人は教室から2つ目の曲がり角を曲がろうとしていて
「郁人!」
授業中の廊下に響く私の声。
聞こえているはずなのに振り返ってくれない郁人に泣きそうになりながら必死に呼び続ける。