泣き虫とヒーロー ~約束の四つ葉のクローバー~


もしも、あの時告白していれば、

結ばれたとしたならば、

俺は奈緒は絶対に守ると言い張って、

きっと、沢村からの脅しにも動じなかったと思う。

けど、俺のただの片想い。

守るなんて図々しいことも言えず、

俺は陰で守ることを選んだ。

でも、それでも守りきれない俺はどうしたらいいのだろう。

俺を必死に追いかけてくる涙を流す奈緒の顔が脳裏から離れない。

奈緒の1つ1つの、言葉が


『そばにいてよっ。

私、郁人がいないとね、涙も止まらないんだよっ、
郁人がいないと眠れないんだよ。

郁人じゃなきゃ勉強もわからないんだよ。

こんな私郁人じゃなきゃ面倒見切れないよ。』

綺麗な雫をこぼしながら静かに強く訴える

儚げな奈緒の表情が俺を離してはくれない、

もしも、あの時キスをしていなければ

「郁人の事、すき。」

そう言っていたのかもしれない。

けど、もう何もかも遅いんだ。


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