泣き虫とヒーロー ~約束の四つ葉のクローバー~
「瀬山様子がおかしかったんだよ。
そう心配そうに言った顧問に
部長と沙織先輩も頷く。
その言葉に昨日の寂しそうな背中…
『幸せになれよ。』
という言葉が脳裏をよぎった。
「何か知らないか?高山。」
顧問の本気で心配そうな声に、
私は首を振った。
麻友の言葉が一瞬脳裏をよぎったけれど、
確実とも言えないし、
それに、郁人の事だ。
それだけならきっと、周平兄に言ってるだろう。
きっと、他に何かある。
けど、その他が分からない私は、
郁人をなんでも知っていると胸を張っていて、
でも、いざこうなったら郁人の何もかもがわからなくなってくる。
自分の無力さを痛いくらいに痛感して、
目の前が霞む。
霞んではクリアになって、
制服の黒と白のチェックのスカートにシミを作っていく。
目頭を手で覆った時に見えた赤いリストバンドを
強く握りしめながら
私は、涙を流し続けた。