泣き虫とヒーロー ~約束の四つ葉のクローバー~
だけど、不意に
「俺さ、好きな人いるんだけど。」
前を見据えたまま私にそう告げた郁人。
私は動揺しているのがばれないように
「そっか。」
とだけ返して髪を耳にかけた。
「奈緒はさ、いねぇの好きなやつ。」
郁人の私を探るような優しい声で
私にとっては残酷な質問を聞いてきた。
私は無理に口角を上げて、
「え〜、いるはず無いじゃん!
だって私バスケ一途だし?」
と郁人の前に立ちながら笑うと
辛そうに顔を歪めた郁人は
「そっか、そうだよな。」
と、悲しそうに呟いた。
そんな郁人にズキっと痛む胸。
やめて期待させないで。
私たちの間を重苦しい
沈黙が流れる。
それに、私は堪えられなくなって
「あ、私先学校行くね!
マネージャーの仕事しなきゃ!」
と笑って郁人の返事も待たずに走り出した。