泣き虫とヒーロー ~約束の四つ葉のクローバー~
「…郁人を避け始める前の日に、
郁人っぽい人と美咲ちゃんがキスしてるのを見た。」
そういえば、びくりと震えた郁人の体。
私を引き剥がして、
じっと私を見つめる力強い真剣な瞳。
ゆっくりと口を開いた郁人に目を閉じたら、
「…俺、奈緒としかキスした時ないんだけど。」
郁人の驚きの言葉に目を見開いた。
え、でも慣れてるよね?
ポカーンとなる私に、
「なんで俺だと思ったんだ?」
と苦笑いの郁人。
そんな郁人の左手のリストバンドに触れて、
「郁人とお揃いのリストバンドをつけてたから…」
と言うと、
暫く考えて、
「それって、佐野じゃね?」
と言ってきた。
え?
「だって、佐野俺にこのリストバンドどこで買ったか聞いてきてその頃に確か買いに行ったらしくて、つけてたぞ。」
と、驚くべき発言をした。
ポカーンとする私は、
ハッとして、
「え、じゃあ二人乗りは?!」
と聞くと、眉間にしわを寄せた郁人は
「…俺自転車の後ろに誰か乗せた時ない。
乗せるつもりもないんだけど。」
と、真剣な瞳で言ってきた。