泣き虫とヒーロー ~約束の四つ葉のクローバー~


深呼吸してから出ると、

『もしもし。』

と大好きな人の声。

「もしもし、お疲れ様。」

『ん、奈緒もお疲れ様。』

いつもと同じセリフを繰り返して、

他愛も無い話をして、

顔を上げると、

郁人とのたくさんの写真。

小さい頃から、お盆の時までのたくさんの写真たちに、
どんどん歪んでいく視界。

『…奈緒?』

心配そうな郁人の声に、

弱音は吐きたく無いのに、

でも、

でも、

「…郁人、会いたいよぉっ…。」

遠距離を始めて初めての弱音だった。

電話はすぐに切られて、

それが余計ショックで止まらない涙。
困らせるってわかってたのに。

怒らせた。

ごめんね、郁人。



その途端ピンポーンと一人暮らしの私の部屋にインターフォンの音が鳴り響いた。

涙を拭って、ドアを確認もせずに開けると、

いきなりデコピンをされた。

デコピンをされたおでこを抑えながら見上げると、

< 335 / 341 >

この作品をシェア

pagetop