月は僕らと。
ひっそりと



玄関から微かな音がした気がして、僕はすぐに玄関へと向かった。扉を開けてみれば、やっばりそこには彼女がいた。

「寒かったでしょ、入って」

そう言って、扉を広く開けて彼女を入るように急かせば、彼女は遠慮がちに僕を見上げて、それから、小さく"ありがとう"と言って靴を脱いだ。


「ちょっと座って待ってて」

そう言えば、また彼女は"ありがとう"と言う。彼女の好きなホットミルクを作ろうと、背を向けた僕の袖を彼女がそっと掴んだ。

「....どうしたの?」

「...急にきて、ごめんね」

「謝ることなんてない、嬉しいよ」


そう。どんな理由があったとしても、例え気まぐれだったとしても、彼女と会えるのは、これ以上ない幸せだ。



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