アナタノコトヲ。
ケータイを見ると、今は午後2時らしい。
夏の一番暑い時間だ。
…が、溜まったゴミも捨てないといけないし、
息抜きに散歩もしたい。
久しぶりに、まともなご飯も食べたいし。
側にいた人が1人いなくなる事が、寂しくて辛い事と知っていたのに、俺はまた人生の繰り返し。
仕事に至っても、インスピレーション湧かないし、筆がのらない。
白紙の原稿用紙に1のページ数を書いて破る。
丸める、捨てる。
書いて、破って、丸めて、捨てる。
その繰り返しだ。
前と同じ生活に戻れって言う方が難しいもんだ。
ーーピンポーン……
「ーー!⁈」
毎日なっていた玄関のベルが鳴る。
「………………花菜?」
走ってドアを開ける。
自分の捨てた白紙の原稿で滑ってこけたが気にしない。
ドアノブに手を引っ掛ける。
「ーー花菜…‼︎!!」
久しぶりに開けたドアに光が差し込む。
目に光が入る。
……眩しい。
目を手で覆い隠し下を見る。
黒い革靴。
大きくて、幅も広い。
「……花菜は、こんなに不細工な足をしていない。」
顔をあげる。
「ーーこんにちは。」
ああ。
気に入らない顔だ。
いつも窓越しに俺を眺めて、嘲笑っている顔だ。
「……久しぶりだね、翔太くん。」