光のワタシと影の私
憧れが絶望に
進学する高校はなるべく同じ中学出身の同級生が通わないような学校に決めた。少しでも私のことを知っている生徒がいたらまた虐めが始まってしまいそうな気がしたから。
それに高校生活には多かれ少なかれ憧れがあった。
少しでも自分の性格を明るいものにして、良い友達を作って、出来れば素敵な彼氏なんかも作ったりして順風満帆な高校生活をエンジョイしてやるつもりでいたのだ。
いきなり化粧とか難しいヘアメイクを実践していくのは無理があったからせめて自分の性格だけでも明るいものにしようとクラス分けで同じクラスになった子たち、席の近い子たちには積極的に話し掛けていくつもりでいた。
だけど、最近の高校生たちは私が知るよりも流行を先取りしていて、友情よりも恋。
勉強よりも自分磨きといったものに時間を掛けている子が目立つような気がした。
それでも私は友達作りに専念した。
幸いにも私の席の近くにいた子はそれほど目立つタイプの子ではなかったようだし、どちらかと言えば私と同じく大人しそうな性格で、挨拶をすればきちんと挨拶をしてくれることから会話がしやすかった。これならば良い高校生活が送れる!…と思っていた矢先に、違う子からの提案によって席替えをおこなわれることになってしまった。
入学当時、席順はあいうえお順になっていて私は後ろの席のほうだった。
席替えの提案をしたのは一番前の席に座っている女子生徒だった。担任の先生も特に拒否する生徒が見られないことから素直に提案を受け入れることにし、席替えをしてしまった。
やっとまともに会話を楽しめる子が出来たと思ったのに席替えをされたら…と残念な気持ちと同時に新しくなった席で会話を楽しめる友達を作っていけば良いかとも考えていた。
「よ、よろしくー…」
初めて声を掛ける子だったから緊張しながらも挨拶をしていくと横にいた子は厚化粧にクルクルと巻かれた髪の毛を弄りながらも「よろしく」と一言声を掛けてくれた。こういう言い方は悪いかもしれないけれど、見た目に反して内面はきちんとしているのかもしれない。この子と仲良くなれば化粧のコツも教えてもらえるかもしれないと思っていたのだ。
ただ、暫くしてから今日もばっちりメイクで決まっている子のほうから声を掛けられてから高校生活での虐めの始まりとなっていった。
「ねぇ?アンタ、○○中学だった子~?」
「え?うん。そうだけど、なんで知ってるの?」
「あは、やっぱり~?じゃあ、アンタが虐められてた子だったんだ~。確かに気弱そうだもんね~?ま、何かあったら私に言いなよ?仕返し、してあげる」
「え?う、うん…ありがと…」
出身中学を知られていたことでまた虐めに遭うのだろうかと思ったけれど、ばっちりメイクの女子生徒は意外にも私に味方してくれるようだった。
正直ホッとした。
これで高校生活を送るなかでは少なくとも虐めに遭わなくて済む。
ビクビクしながら過ごしていた中学時代のような想いだけはしなくて済むのだと思うととても気が楽になった。
ただ、その子が急に私に対しての態度を豹変させたのは一週間も経たない頃だった。
「おはよう」
「…」
先に席に着いていた子は音楽でも聴いているのかイヤフォンを付けていたし、私が挨拶をしても聞こえていないのだと思っていた。
だけど授業が終わって休み時間になっても私と言葉一つ交わそうともしないし、顔も合わせようともしてくれない。
たまらずに私は帰るために席を立とうとするその子の腕を引っ張って足を止めさせると「どうしたの?!」と問い掛けた。すると、強い力で腕を振りほどかれると「止めてよ、汚い」とゴミでも見るように私を見返してきたのだ。
あぁ…やっぱり、このままじゃ…まずい。
高校に入ってからもなかなか交友関係を広げることが出来なかった私にはもちろん味方をしてくれる生徒もいなかったし、こんなとき誰に助けを求めて良いのかも分からなかった。
先生を頼って助けてもらうように言いに行こうか…?
それとも席替えをする前に仲良く話しをすることが出来た子に相談しに行こうか…?
入学当初、緊張しながらも拙い挨拶から始まり仲良くなることが出来た子は私たちの様子に驚いたような目をしてからニコリと無邪気な笑みを浮かべて席を立つなり私のほうに近づいてくる。
「だから言ったでしょ?仕返し、してやるって。私のこと忘れちゃった?」
制服のポケットから黒縁のメガネを取り出すとその子は自分の目元に掛けていけばその姿はすぐに思い出すことが出来た。私が中学時代のときに虐めから助けてあげた子でもあり、私が虐めに遭うきっかけともなる人物となった子だった。
メガネを掛けていなかったから入学当時、私は気がつかなかったけれど、目の前の子はもしかしたら最初から私のことに気が付いていて虐めをする機会を伺っていたのかもしれないと思うと背筋がゾッとした。
「まだまだこれから貴女への仕返しは続いていくんだから~。…適当な理由付けて学校、休んじゃ駄目だよ~?」
再び彼女は目元に掛けていたメガネを外すとなんとも愛想の良い笑顔を私に向ければ通学鞄を手にして教室から廊下に出て行った。
中学時代、進学する先にはどんな子がいるのかきちんと先生には確認したつもりでいた。だからなるべく嫌な関わり合いがあった子とは進学先が被らないようにしたつもりだったはずなのだが、まだまだ甘かったらしい。もしかしたら私が進学先を決めてからあの子が後になってから進学先を急遽変更したのかもしれない。
「…また、虐められるんだ…」
助けて欲しかった。
誰でも良いから、一緒に悩んだり、私の話しを聞いてくれる人が欲しかった。
高校での虐めが本格的に始まると同時に私のインターネット利用の時間も日に日に増えるようになっていった。それこそ睡眠時間を減らしてでもインターネットに夢中になっていった。
ちょっとしたチャット場に頻繁に顔を出すようにしていけば、同じく頻繁にチャットを利用している人とは話しやすくなっていく。なによりもインターネットという顔が見えない場においてのおしゃべりというコミュニケーションはとても私にとっては話しやすい場になった。
虐めに遭っていることをさらけ出して少しでも応援してくれるインターネット上で知り合っていく人たちの言葉に救われたような気持ちになっていったし、日々更新されていく『REI』のブログを目にしては虐めに屈服してしまいそうになる心をなんとかつなぎとめていく生活を続けていくようになった。
それに高校生活には多かれ少なかれ憧れがあった。
少しでも自分の性格を明るいものにして、良い友達を作って、出来れば素敵な彼氏なんかも作ったりして順風満帆な高校生活をエンジョイしてやるつもりでいたのだ。
いきなり化粧とか難しいヘアメイクを実践していくのは無理があったからせめて自分の性格だけでも明るいものにしようとクラス分けで同じクラスになった子たち、席の近い子たちには積極的に話し掛けていくつもりでいた。
だけど、最近の高校生たちは私が知るよりも流行を先取りしていて、友情よりも恋。
勉強よりも自分磨きといったものに時間を掛けている子が目立つような気がした。
それでも私は友達作りに専念した。
幸いにも私の席の近くにいた子はそれほど目立つタイプの子ではなかったようだし、どちらかと言えば私と同じく大人しそうな性格で、挨拶をすればきちんと挨拶をしてくれることから会話がしやすかった。これならば良い高校生活が送れる!…と思っていた矢先に、違う子からの提案によって席替えをおこなわれることになってしまった。
入学当時、席順はあいうえお順になっていて私は後ろの席のほうだった。
席替えの提案をしたのは一番前の席に座っている女子生徒だった。担任の先生も特に拒否する生徒が見られないことから素直に提案を受け入れることにし、席替えをしてしまった。
やっとまともに会話を楽しめる子が出来たと思ったのに席替えをされたら…と残念な気持ちと同時に新しくなった席で会話を楽しめる友達を作っていけば良いかとも考えていた。
「よ、よろしくー…」
初めて声を掛ける子だったから緊張しながらも挨拶をしていくと横にいた子は厚化粧にクルクルと巻かれた髪の毛を弄りながらも「よろしく」と一言声を掛けてくれた。こういう言い方は悪いかもしれないけれど、見た目に反して内面はきちんとしているのかもしれない。この子と仲良くなれば化粧のコツも教えてもらえるかもしれないと思っていたのだ。
ただ、暫くしてから今日もばっちりメイクで決まっている子のほうから声を掛けられてから高校生活での虐めの始まりとなっていった。
「ねぇ?アンタ、○○中学だった子~?」
「え?うん。そうだけど、なんで知ってるの?」
「あは、やっぱり~?じゃあ、アンタが虐められてた子だったんだ~。確かに気弱そうだもんね~?ま、何かあったら私に言いなよ?仕返し、してあげる」
「え?う、うん…ありがと…」
出身中学を知られていたことでまた虐めに遭うのだろうかと思ったけれど、ばっちりメイクの女子生徒は意外にも私に味方してくれるようだった。
正直ホッとした。
これで高校生活を送るなかでは少なくとも虐めに遭わなくて済む。
ビクビクしながら過ごしていた中学時代のような想いだけはしなくて済むのだと思うととても気が楽になった。
ただ、その子が急に私に対しての態度を豹変させたのは一週間も経たない頃だった。
「おはよう」
「…」
先に席に着いていた子は音楽でも聴いているのかイヤフォンを付けていたし、私が挨拶をしても聞こえていないのだと思っていた。
だけど授業が終わって休み時間になっても私と言葉一つ交わそうともしないし、顔も合わせようともしてくれない。
たまらずに私は帰るために席を立とうとするその子の腕を引っ張って足を止めさせると「どうしたの?!」と問い掛けた。すると、強い力で腕を振りほどかれると「止めてよ、汚い」とゴミでも見るように私を見返してきたのだ。
あぁ…やっぱり、このままじゃ…まずい。
高校に入ってからもなかなか交友関係を広げることが出来なかった私にはもちろん味方をしてくれる生徒もいなかったし、こんなとき誰に助けを求めて良いのかも分からなかった。
先生を頼って助けてもらうように言いに行こうか…?
それとも席替えをする前に仲良く話しをすることが出来た子に相談しに行こうか…?
入学当初、緊張しながらも拙い挨拶から始まり仲良くなることが出来た子は私たちの様子に驚いたような目をしてからニコリと無邪気な笑みを浮かべて席を立つなり私のほうに近づいてくる。
「だから言ったでしょ?仕返し、してやるって。私のこと忘れちゃった?」
制服のポケットから黒縁のメガネを取り出すとその子は自分の目元に掛けていけばその姿はすぐに思い出すことが出来た。私が中学時代のときに虐めから助けてあげた子でもあり、私が虐めに遭うきっかけともなる人物となった子だった。
メガネを掛けていなかったから入学当時、私は気がつかなかったけれど、目の前の子はもしかしたら最初から私のことに気が付いていて虐めをする機会を伺っていたのかもしれないと思うと背筋がゾッとした。
「まだまだこれから貴女への仕返しは続いていくんだから~。…適当な理由付けて学校、休んじゃ駄目だよ~?」
再び彼女は目元に掛けていたメガネを外すとなんとも愛想の良い笑顔を私に向ければ通学鞄を手にして教室から廊下に出て行った。
中学時代、進学する先にはどんな子がいるのかきちんと先生には確認したつもりでいた。だからなるべく嫌な関わり合いがあった子とは進学先が被らないようにしたつもりだったはずなのだが、まだまだ甘かったらしい。もしかしたら私が進学先を決めてからあの子が後になってから進学先を急遽変更したのかもしれない。
「…また、虐められるんだ…」
助けて欲しかった。
誰でも良いから、一緒に悩んだり、私の話しを聞いてくれる人が欲しかった。
高校での虐めが本格的に始まると同時に私のインターネット利用の時間も日に日に増えるようになっていった。それこそ睡眠時間を減らしてでもインターネットに夢中になっていった。
ちょっとしたチャット場に頻繁に顔を出すようにしていけば、同じく頻繁にチャットを利用している人とは話しやすくなっていく。なによりもインターネットという顔が見えない場においてのおしゃべりというコミュニケーションはとても私にとっては話しやすい場になった。
虐めに遭っていることをさらけ出して少しでも応援してくれるインターネット上で知り合っていく人たちの言葉に救われたような気持ちになっていったし、日々更新されていく『REI』のブログを目にしては虐めに屈服してしまいそうになる心をなんとかつなぎとめていく生活を続けていくようになった。