光のワタシと影の私
オーディション
事務所からの発表というものは『REIとのデュエットオーディション開催』する、というもの。
私はてっきりREIと二人で歌うものだとばかり思っていたからこの事務所からの発表には目を丸くすることしか出来なかった。
それは、REI本人からしても同じ想いだったようで朝の番組でオーディション決定のニュースが終わると同時にREIからメールが届いた。
『ちょっと、信じられない!きちんと社長には、麗華がワタシの相棒ってことで通したはずだよ?!今更オーディションをするなんて…』
REIが私をデュエットに選んだことに事務所側としては話しを聞かれていなかったのか、もしくは私があまりにも地味過ぎたためにREIの隣りに立つことが許されないとされたのか分からないが、せっかく私がやる気を出したというのにオーディションを始めるということは別の新たなREIの歌う人を選ぶということだ。
私としては、とても残念でならない。
憧れのアイドルと歌うことが出来る!それだけでもまるで夢のようだったにも関わらず本当に夢で終わってしまうのかと思うととても心が痛んだ。
ニュースにもなるほどのオーディション内容だっただけに学校に登校してきても私に挨拶すらしない生徒たちはREIのオーディション話しで盛り上がりを見せていた。
REIと同世代である彼女たちはREIは憧れの存在でもあるし、もしもオーディションでマスコミを始め世間からも注目の的になればアイドルや歌手として生活していくことが出来るからだ。
いつも派手な化粧、くるくると巻かれた髪、臭いほどに付けられた香水を撒き散らしている女子生徒たちはここぞとばかりにREIとユニットを組むためのオーディションに向けて着々と準備を始めていた。
まず、オーディションで必要となるものは写真だ。
上半身から上のモノと全身の写真が必要になる。
女子生徒たちは浮かれながら少しでも肌が綺麗に移る教室の明るい場所に立っては友達に携帯電話を貸して何枚もの写真を撮影していた。
特に女子に限られたオーディションでは無かったためにREIに熱狂的な男子生徒たちの多くも半分は面白がり、そしてもう半分は本気な様子で写真を撮り、少しでも写りが良いものを選んではネット上からREIの所属している事務所にメールを送信していった。
最近では、いちいち書類を送るケースよりも、インターネットを通じて写真選考を行っている芸能事務所も少なくない。このほうが一枚一枚書類に目を通していくという事務所のスタッフの手間も大分省くことが出来てしまうし、メールをチェックさえすれば良いのだから事務所側としても楽な作業になっていく。
写真を送信した生徒たちは今か今かと返信メールを楽しみにしながら本日の授業が始まっていった。
REIは私と一緒に歌いたいと言ってくれた。
だけど、今日になってから事務所のほうからREIと歌う人を求めるオーディションを開始した。
REIと事務所側とは食い違いでもあるのだろうか?
それとも、REIが独断で決めたことだったのか…事務所側と上手い人間関係を築くことが出来なくなってきているのだろうか?それは不思議でならなかった。
先日会ったREIは、私の歌声を聴いたときにはとても生き生きとして見えたし、何か考え込んでいるような…悩みを抱えているような素振りも見せていなかったと思う。それなのに今日になっていきなりオーディションを開始されてREIも戸惑っているに違いない。
そんな考えを巡らせていると、バイブ設定にしていた携帯にメールが届くとこそこそと隠れながら新着のメールを開いてみるとREIからだった。
『オーディションの話し、聞いてるよね?…ごめん。ワタシがもっと早くに社長に言っておけばこんなことにならずに済んだのに…。社長にはなんとかして説得してオーディションを取りやめてもらうか片っ端から応募してきた人を不合格扱いにして上手くやりくりしてみせるから安心してね?あ、追伸。ボイトレのほうはどう?あまり無理せず麗華のペースで続けていってね?』
やっぱりREIの考えと事務所側の考えには食い違いがあったらしい。事務所側としてもREIとユニットを組む人材を欲しがっていたところだが良い人選が見つからずに今回、オーディションという形で募集を募ったのだろう。しかし、REIとしては私に目を付けてユニットに決定!という形に至ったらしい。
たった数分、数時間の間でこんな大事になってしまうなんて芸能界というものは大変なものだ。
「あ、あの子も携帯触ってる~」
「もしかしてオーディション受けるの?」
「ないない!あの子に限ってそれは無いっしょ~」
「もっと自分の顔、鏡で見ろって感じだよね~」
私が携帯を操作している仕草を目にしていた何人かの女子生徒たちは私がオーディションに応募しているものかと考え込んでいたらしいが、まったくもって違う。
私はREIの悩みや相談をしっかりと受け止めて拙い文章ながらも返信していった。
『お疲れ様、REI!私も今朝のニュースでびっくりしたよ~、いやホントに。だけど、事務所側に相談して本当に今更オーディションはしません!って流れにもっていくことって出来るのかな?取り敢えずオーディション自体はおこなったほうが良いと思うんだよね。今更オーディション中止、なんてことになったらもっと世の中の人たちは何事かと思うはずだし…』
『うーん…難しいだろうけど、私も審査員の一人になってオーディションは取り敢えず進めてみることにするよ。なんと言ったって一緒に歌うのはこのワタシなんだから!』
そうだ。
どんなに事務所の人たちの推薦があったとしても一緒にユニットとして組むREIが合わないと思ったら即お断りをするだろう。
…それにしても、私の歌のどこにREIを感動させるモノがあったんだろうか?
特別なボイストレーニングをしてきたわけでもなく、カラオケも…あまり得意ではない。好きな曲があれば鼻歌で歌う程度はするけれど、どちらかと言えば人の曲を聴いて過ごすことのほうが好きなのだ。そんな私とユニットを組んでREIは満足してくれるのだろうかが疑問だった。
私に決めてくれたことはもの凄く嬉しかったけれど、今更になって不安が押し寄せてくる。
本当に私で良いのか?
私と歌うことでREIが巷から悪い評判を受けたりしないだろうか?
REIのファンである私にとってもそれだけが不安で仕方がなかった。
私はてっきりREIと二人で歌うものだとばかり思っていたからこの事務所からの発表には目を丸くすることしか出来なかった。
それは、REI本人からしても同じ想いだったようで朝の番組でオーディション決定のニュースが終わると同時にREIからメールが届いた。
『ちょっと、信じられない!きちんと社長には、麗華がワタシの相棒ってことで通したはずだよ?!今更オーディションをするなんて…』
REIが私をデュエットに選んだことに事務所側としては話しを聞かれていなかったのか、もしくは私があまりにも地味過ぎたためにREIの隣りに立つことが許されないとされたのか分からないが、せっかく私がやる気を出したというのにオーディションを始めるということは別の新たなREIの歌う人を選ぶということだ。
私としては、とても残念でならない。
憧れのアイドルと歌うことが出来る!それだけでもまるで夢のようだったにも関わらず本当に夢で終わってしまうのかと思うととても心が痛んだ。
ニュースにもなるほどのオーディション内容だっただけに学校に登校してきても私に挨拶すらしない生徒たちはREIのオーディション話しで盛り上がりを見せていた。
REIと同世代である彼女たちはREIは憧れの存在でもあるし、もしもオーディションでマスコミを始め世間からも注目の的になればアイドルや歌手として生活していくことが出来るからだ。
いつも派手な化粧、くるくると巻かれた髪、臭いほどに付けられた香水を撒き散らしている女子生徒たちはここぞとばかりにREIとユニットを組むためのオーディションに向けて着々と準備を始めていた。
まず、オーディションで必要となるものは写真だ。
上半身から上のモノと全身の写真が必要になる。
女子生徒たちは浮かれながら少しでも肌が綺麗に移る教室の明るい場所に立っては友達に携帯電話を貸して何枚もの写真を撮影していた。
特に女子に限られたオーディションでは無かったためにREIに熱狂的な男子生徒たちの多くも半分は面白がり、そしてもう半分は本気な様子で写真を撮り、少しでも写りが良いものを選んではネット上からREIの所属している事務所にメールを送信していった。
最近では、いちいち書類を送るケースよりも、インターネットを通じて写真選考を行っている芸能事務所も少なくない。このほうが一枚一枚書類に目を通していくという事務所のスタッフの手間も大分省くことが出来てしまうし、メールをチェックさえすれば良いのだから事務所側としても楽な作業になっていく。
写真を送信した生徒たちは今か今かと返信メールを楽しみにしながら本日の授業が始まっていった。
REIは私と一緒に歌いたいと言ってくれた。
だけど、今日になってから事務所のほうからREIと歌う人を求めるオーディションを開始した。
REIと事務所側とは食い違いでもあるのだろうか?
それとも、REIが独断で決めたことだったのか…事務所側と上手い人間関係を築くことが出来なくなってきているのだろうか?それは不思議でならなかった。
先日会ったREIは、私の歌声を聴いたときにはとても生き生きとして見えたし、何か考え込んでいるような…悩みを抱えているような素振りも見せていなかったと思う。それなのに今日になっていきなりオーディションを開始されてREIも戸惑っているに違いない。
そんな考えを巡らせていると、バイブ設定にしていた携帯にメールが届くとこそこそと隠れながら新着のメールを開いてみるとREIからだった。
『オーディションの話し、聞いてるよね?…ごめん。ワタシがもっと早くに社長に言っておけばこんなことにならずに済んだのに…。社長にはなんとかして説得してオーディションを取りやめてもらうか片っ端から応募してきた人を不合格扱いにして上手くやりくりしてみせるから安心してね?あ、追伸。ボイトレのほうはどう?あまり無理せず麗華のペースで続けていってね?』
やっぱりREIの考えと事務所側の考えには食い違いがあったらしい。事務所側としてもREIとユニットを組む人材を欲しがっていたところだが良い人選が見つからずに今回、オーディションという形で募集を募ったのだろう。しかし、REIとしては私に目を付けてユニットに決定!という形に至ったらしい。
たった数分、数時間の間でこんな大事になってしまうなんて芸能界というものは大変なものだ。
「あ、あの子も携帯触ってる~」
「もしかしてオーディション受けるの?」
「ないない!あの子に限ってそれは無いっしょ~」
「もっと自分の顔、鏡で見ろって感じだよね~」
私が携帯を操作している仕草を目にしていた何人かの女子生徒たちは私がオーディションに応募しているものかと考え込んでいたらしいが、まったくもって違う。
私はREIの悩みや相談をしっかりと受け止めて拙い文章ながらも返信していった。
『お疲れ様、REI!私も今朝のニュースでびっくりしたよ~、いやホントに。だけど、事務所側に相談して本当に今更オーディションはしません!って流れにもっていくことって出来るのかな?取り敢えずオーディション自体はおこなったほうが良いと思うんだよね。今更オーディション中止、なんてことになったらもっと世の中の人たちは何事かと思うはずだし…』
『うーん…難しいだろうけど、私も審査員の一人になってオーディションは取り敢えず進めてみることにするよ。なんと言ったって一緒に歌うのはこのワタシなんだから!』
そうだ。
どんなに事務所の人たちの推薦があったとしても一緒にユニットとして組むREIが合わないと思ったら即お断りをするだろう。
…それにしても、私の歌のどこにREIを感動させるモノがあったんだろうか?
特別なボイストレーニングをしてきたわけでもなく、カラオケも…あまり得意ではない。好きな曲があれば鼻歌で歌う程度はするけれど、どちらかと言えば人の曲を聴いて過ごすことのほうが好きなのだ。そんな私とユニットを組んでREIは満足してくれるのだろうかが疑問だった。
私に決めてくれたことはもの凄く嬉しかったけれど、今更になって不安が押し寄せてくる。
本当に私で良いのか?
私と歌うことでREIが巷から悪い評判を受けたりしないだろうか?
REIのファンである私にとってもそれだけが不安で仕方がなかった。