光のワタシと影の私
REI頑張る!
応募してきた書類、送られてきたメールを全てゴミ箱入りにするわけにはいかなかったらしくて少しでも歌手候補に出来そうな子(男女問わず)が残ると同時に二次審査に移行することになった。
そして、ワタシ…REIも実際に面札の審査員の一人になることで間近に応募者たちの雰囲気を感じ取ってみることにしたのだ。
「はい、では一番目の人どうぞ」
コンコンと軽く面接室のドアがノックされる音がしてから見事に一次審査(写真だけ)を通過した応募者が面接室に入ってきた。見るからに緊張しているのか顔は強張っているし、うっすら顔には汗も光ってみえた。面接者から2、3メートルほど離れた位置に置かれた椅子の横に立つとようやくワタシの姿を視界に捉えたらしく余計に緊張が増したらしい。視界をおろおろとさまよわせてどこに視線を向けて良いのか迷っているらしい。
「どうぞ、お座りください」
審査員である鳴宮さんがそう抑揚の無い口調で告げると一番目に呼ばれた彼女はワタシと同年代らしい。きっとワタシと同じように芸能界という世界に憧れて応募をしてきたのだろうが芸能界というものはそう生易しいものではないのだ。
「あなたはなぜ応募してきたのですか?理由を教えてください」
「わ、私は…REIちゃんのファンなんです!ファンとしてREIちゃんの支えになれたらと思って応募させてもらいました!」
答えとしては、まぁ妥当なところだろう。
ただ、ワタシは横目に鳴宮さんの動くペン先を視界に入れてしまった。
『不合格』
「ありがとうございました。今日のところはお帰りください」
「え?あ、あの…アカペラがあるって聞いたんですけど…」
「結構です。お帰りください」
うわー…鳴宮さん、笑ってるのにそれ笑ってないから。
今の鳴宮さんの笑顔はまるで閻魔大王様降臨といったオーラが出ていた。面接者はそのオーラを面と向かって目にしたのだからよっぽど心苦しい想いをしたことだろう、早々と挨拶をすれば逃げるように面接室から出て行ってしまった。
「…次の方、どうぞ」
「はぁ~い」
ちょっと間延びした口調。
就職面接であれば即不合格の印鑑を押されてしまいそうなモノだったが、どのような人物だったのだろうか?
面接室にやってきた彼女を目にするとやっぱりワタシの期待を裏切ることは無かった。
フリフリのスカートに、ニーハイソックス、くるくると丁寧に巻かれた巻き髪にイヤリングだろうか?それともピアスだろうか?それをちらつかせながら如何にも「派手」の一言で言いくるめることが出来てしまいそうなワタシと同年代の女の子がやってきた。
「…どうぞ、お座りください」
きっと鳴宮さんも呆気にとられてしまったのだろう。一瞬、間があったことはワタシでも分かった。
「…あなたがこのオーディションに応募してきた理由を聞かせてください」
「えー、だってアイドルになればカッコいい人と出会えるかもしれないでしょ?モデルとか、ダンサーとか。もちろんREIと一緒に歌うことで世間に注目してもらいたいって気持ちはあるかな~」
ふむ…。
前半だけを耳にしていくとふざけているのか?とも思えたものの後半になっていくにつれて彼女は彼女らしく考えているということが分かってきた。
鳴宮さんは、まだ『不合格』の印を書類に記載していない。
「…では、あなたの得意な歌で構いませんからアカペラで1コーラス歌ってみてくれませんか?」
「はぁ~い」
返事は相変わらず間延びしているけれど、すくっと椅子から立ち上がり歌う準備を整えている彼女にはそれとなく品のようなものがあって思わずじっと眺めてしまった。
「わたしは ここにいるの あなたが見ているのは わたしの影 影が悔しい 影なんて無くしてしまえ 影を失った後には わたしもいなかった」
この曲はワタシの発売しているCDの一つのなかの1コーラスだった。
歌唱力はそれほど悪くない。
悪くない、はずなんだけれど…あまり胸を熱くさせるものが彼女の歌声には無かった。
そして、鳴宮さんの手元を覗き込んでみると『不合格』の記載があった。
「ありがとうございました。結果は後日郵送させていただきます。今日は、お帰りください」
「え~、せっかくREIに会えたのに~…残念ー」
「REIも忙しい立場なのですみませんが、お帰りください」
心無しか鳴宮さんの掴んでいるペンがぎしりと音を立てたような気がした。そのまま力を入れ続けていったら間違いなくペンは折れてしまうことだろう。
渋々といった様子で面接室から彼女がいなくなるとドッと疲れが一気に押し寄せてきたせいもあって椅子の背もたれ部分に寄り掛かればホッと安堵の溜め息を吐いた。
今回、ワタシが一緒に面接の会場に付き添うのは今回が初めてだったけれど他の日にも多くの応募者たちの面接をおこなっているらしい。
そして質疑応答で不適合者だと分かればその時点で帰ってもらい、ちょっと面白そうな子がいればアカペラまで続くもののそれでも最終的には不合格者として判断していくらしい。
面接が始まるまでの数日間のうちにワタシは事務所の社長に深く頭を下げる形で自分のパートナーはもう決まっていること、素敵な歌声で胸を熱くさせる子だということを熱心に語っていた。
ただ、事務所としてはオーディション開催の告知をしたということもあって今更オーディションを止めてしまうわけにもいかないから形だけでも、ということで書類審査、そして面接もおこなっていくという形になったのだ。
また、鳴宮さんにも聞いてもらった麗華の歌声は事務所のスタッフをはじめ社長にも聞いてもらって好評価!
また、麗華が歌手でもなければボイストレーニング経験も無いということを告げて一般の人であるということを告げていくとみんながみんな目を丸くして驚いていたっけ。
取り敢えずもう少しの間は一次審査を通過した子たちの面接をするらしい。残念ながらワタシは参加することは出来ないものの誰も受からないオーディションにわざわざ多くの子たちが夢を見てやってくるなんて…少々胸が痛むが、仕方のないことだった。
だからその分、ワタシも頑張らなければならないし、麗華も頑張ってもらわなければならないのだ。
そして、ワタシ…REIも実際に面札の審査員の一人になることで間近に応募者たちの雰囲気を感じ取ってみることにしたのだ。
「はい、では一番目の人どうぞ」
コンコンと軽く面接室のドアがノックされる音がしてから見事に一次審査(写真だけ)を通過した応募者が面接室に入ってきた。見るからに緊張しているのか顔は強張っているし、うっすら顔には汗も光ってみえた。面接者から2、3メートルほど離れた位置に置かれた椅子の横に立つとようやくワタシの姿を視界に捉えたらしく余計に緊張が増したらしい。視界をおろおろとさまよわせてどこに視線を向けて良いのか迷っているらしい。
「どうぞ、お座りください」
審査員である鳴宮さんがそう抑揚の無い口調で告げると一番目に呼ばれた彼女はワタシと同年代らしい。きっとワタシと同じように芸能界という世界に憧れて応募をしてきたのだろうが芸能界というものはそう生易しいものではないのだ。
「あなたはなぜ応募してきたのですか?理由を教えてください」
「わ、私は…REIちゃんのファンなんです!ファンとしてREIちゃんの支えになれたらと思って応募させてもらいました!」
答えとしては、まぁ妥当なところだろう。
ただ、ワタシは横目に鳴宮さんの動くペン先を視界に入れてしまった。
『不合格』
「ありがとうございました。今日のところはお帰りください」
「え?あ、あの…アカペラがあるって聞いたんですけど…」
「結構です。お帰りください」
うわー…鳴宮さん、笑ってるのにそれ笑ってないから。
今の鳴宮さんの笑顔はまるで閻魔大王様降臨といったオーラが出ていた。面接者はそのオーラを面と向かって目にしたのだからよっぽど心苦しい想いをしたことだろう、早々と挨拶をすれば逃げるように面接室から出て行ってしまった。
「…次の方、どうぞ」
「はぁ~い」
ちょっと間延びした口調。
就職面接であれば即不合格の印鑑を押されてしまいそうなモノだったが、どのような人物だったのだろうか?
面接室にやってきた彼女を目にするとやっぱりワタシの期待を裏切ることは無かった。
フリフリのスカートに、ニーハイソックス、くるくると丁寧に巻かれた巻き髪にイヤリングだろうか?それともピアスだろうか?それをちらつかせながら如何にも「派手」の一言で言いくるめることが出来てしまいそうなワタシと同年代の女の子がやってきた。
「…どうぞ、お座りください」
きっと鳴宮さんも呆気にとられてしまったのだろう。一瞬、間があったことはワタシでも分かった。
「…あなたがこのオーディションに応募してきた理由を聞かせてください」
「えー、だってアイドルになればカッコいい人と出会えるかもしれないでしょ?モデルとか、ダンサーとか。もちろんREIと一緒に歌うことで世間に注目してもらいたいって気持ちはあるかな~」
ふむ…。
前半だけを耳にしていくとふざけているのか?とも思えたものの後半になっていくにつれて彼女は彼女らしく考えているということが分かってきた。
鳴宮さんは、まだ『不合格』の印を書類に記載していない。
「…では、あなたの得意な歌で構いませんからアカペラで1コーラス歌ってみてくれませんか?」
「はぁ~い」
返事は相変わらず間延びしているけれど、すくっと椅子から立ち上がり歌う準備を整えている彼女にはそれとなく品のようなものがあって思わずじっと眺めてしまった。
「わたしは ここにいるの あなたが見ているのは わたしの影 影が悔しい 影なんて無くしてしまえ 影を失った後には わたしもいなかった」
この曲はワタシの発売しているCDの一つのなかの1コーラスだった。
歌唱力はそれほど悪くない。
悪くない、はずなんだけれど…あまり胸を熱くさせるものが彼女の歌声には無かった。
そして、鳴宮さんの手元を覗き込んでみると『不合格』の記載があった。
「ありがとうございました。結果は後日郵送させていただきます。今日は、お帰りください」
「え~、せっかくREIに会えたのに~…残念ー」
「REIも忙しい立場なのですみませんが、お帰りください」
心無しか鳴宮さんの掴んでいるペンがぎしりと音を立てたような気がした。そのまま力を入れ続けていったら間違いなくペンは折れてしまうことだろう。
渋々といった様子で面接室から彼女がいなくなるとドッと疲れが一気に押し寄せてきたせいもあって椅子の背もたれ部分に寄り掛かればホッと安堵の溜め息を吐いた。
今回、ワタシが一緒に面接の会場に付き添うのは今回が初めてだったけれど他の日にも多くの応募者たちの面接をおこなっているらしい。
そして質疑応答で不適合者だと分かればその時点で帰ってもらい、ちょっと面白そうな子がいればアカペラまで続くもののそれでも最終的には不合格者として判断していくらしい。
面接が始まるまでの数日間のうちにワタシは事務所の社長に深く頭を下げる形で自分のパートナーはもう決まっていること、素敵な歌声で胸を熱くさせる子だということを熱心に語っていた。
ただ、事務所としてはオーディション開催の告知をしたということもあって今更オーディションを止めてしまうわけにもいかないから形だけでも、ということで書類審査、そして面接もおこなっていくという形になったのだ。
また、鳴宮さんにも聞いてもらった麗華の歌声は事務所のスタッフをはじめ社長にも聞いてもらって好評価!
また、麗華が歌手でもなければボイストレーニング経験も無いということを告げて一般の人であるということを告げていくとみんながみんな目を丸くして驚いていたっけ。
取り敢えずもう少しの間は一次審査を通過した子たちの面接をするらしい。残念ながらワタシは参加することは出来ないものの誰も受からないオーディションにわざわざ多くの子たちが夢を見てやってくるなんて…少々胸が痛むが、仕方のないことだった。
だからその分、ワタシも頑張らなければならないし、麗華も頑張ってもらわなければならないのだ。