光のワタシと影の私
新曲発表イベント
社長がボイストレーニングルームから去って行ってしまうとクスッと思わず笑みを浮かべてREIの顔を見た。
「社長さんって良い人ですね。きちんと芸能界の厳しさも教えてくれて…鼓舞もしてくれて…」
「…麗華の周りにはいないの?応援とかしてくれる人」
「家族は…一応応援してくれてるけど…学校には、特にいないから…」
「そっか…」
私が虐めに遭っていることはREIは知っているから一気に空気が重たくなってしまった。さて、どうしよう…。これからボイストレーニングをするといっても気が乗らない気持ちのままではきちんと声の調子を整えるのも難しくなってしまいそうだ。
「!そうだ。新曲発表のイベントが渋谷であるんだけど、もちろん麗華にも付き合ってもらうわよ?ワタシたちユニットなんだから」
「え、ええ?!し、渋谷?!い、行ったことないよ?!」
「大丈夫大丈夫!ワタシが案内するから。っていうか、一緒に車で移動するし!」
REIはあちこちの場所でイベントをすることにも慣れているらしく多くの人が行き交っている渋谷でのイベントにもまったく動じる様子は見られなかった。やっぱり人慣れしているREIは凄い。
「そこでは実際に歌を歌う必要は…たぶん無いかな。新曲はこういう曲です~って説明と、握手会みたいなものをするだけだから安心して?」
「そ、それでも緊張するんだけど…というか、今から緊張してきた…」
「っぷ、あはは!今から緊張してどうすんの?!イベントまではまだ日数もあるからじっくり予定を組む時間はあるから大丈夫だよ」
「う、うん…」
REIが言うにはイベントがおこなわれるのは二週間後らしい。
うん、時間的には充分に機関があるし、今のうちに最低限でも事務所で働いているスタッフさんとのスキンシップや挨拶もきちんとこなせるようになければ!
イベントには私が知らない人ばかりが集まってくるだろうから当日は何も出来なく終わってしまうだろう。でも、そこはきっとREIが支えてくれる。そう信じてくれるから。
「さぁて、これからどうしよっかな~…一応新曲の譜面はあるからピアノとかで演奏してみる?歌う必要は無いけど、普段から曲調を聴くことだってとっても必要なことだし、なによりもリラックス出来る曲になれば人前に出てもそう緊張しなくなるようになるよ」
「REIは…いつもどうやって、ライブハウスのときとか…どうやってリラックスしてたの?」
「ワタシの場合は…とにかく歌うことに集中していた、かな。目の前のお客さんたちのことも視界に入らないぐらい歌に集中していけば不思議とリラックスして、練習した通りの歌を歌えるようになるから」
普段から歌のことを考えているなんてやっぱりREIは凄い。
私もiPodでREIの曲をいくつも聴いて過ごしているけれど、REIの場合はもっと多くの時間を歌と過ごしているはずだ。
「…それはそうと…今日は、大丈夫だったの?記者会見でバレちゃったんでしょ?」
「うん…。REIには不似合いだとか、いい気になるなとかは言われたけど…それぐらい何とも無いから、平気だよ…っ?!」
私が言い終わるよりも先にREIが両腕を私の背中に回してぎゅっと抱きしめてくれた。ほのかに香る良い匂いはREIの付けている香水か何かだろうか?とても心地の良い匂いだった。
「ツライ想いさせて、ごめんね…。だけど、ワタシは麗華と一緒に歌いたい…これからも迷惑掛けるかもしれないけれど…お願い、麗華の力を貸して欲しい…」
「も、もちろんだよ!そうじゃなきゃこんなこと引き受けたりしないし!」
「それもそっか。…ふふ、ありがとう麗華」
私の身体を包み込んでくれていた腕が離されると少々名残惜しさを感じたものの次にREIの見せてくれた笑顔に私の心はホッとした。
いつも学校に行けば悪戯の後片付けばかりをしてから授業に向かうという毎日。
いつからこんな生活を…そしていつまで続くのかと考えていたけれど、それはREIに出会ってからも変わることは無かった。
それでも私は逃げたり、屈したりすることはない。
虐めを仕返ししたりするようなこともしない。
今の私は、少しでもREIの力になるために歌唱力を上げることに専念しなければならないのだ。
二人で和やかなおしゃべりをしているといきなりドアが開くと同時にお姉ちゃんが飛び込んでくるように息を切らして入ってきた。
「ちょ、ちょうど良かった!二人とも一緒だったのね!REI、麗華!悪いけど、新曲発表のイベント明日になったから準備をしておいて!」
「え?!」
「ちょ、どういうことですか?!」
さすがにREIもびっくりした様子で目を丸くしながらお姉ちゃんの顔を見つめていた。
確かイベントまではかなり余裕があったはずだ。それなのに明日になるなんて準備していたらあっという間に時間は過ぎていってしまう。
「先日、記者会見があったでしょ?その勢いに乗せようってことで、イベントは前倒しになっちゃったのよ!あの、社長ー…っ…まったくこっちの予定なんて考えもしないんだから!」
どうやらイベントの日取りを早めたのは社長らしい。
でも、これはある意味、良い体験や経験を積めそうな気がする。
「お姉ちゃん…私は、大丈夫だよ。頑張ってみる!」
「麗華…。REIは?」
「ワタシも同感です。さすがに今日から明日にかけて寝る時間は限られるかもしれませんけど、思い切って勢いに乗って早めにイベントをおこなってみるのも良いかもしれませんからね」
私もREIも同じ意見だったらしくお姉ちゃんはホッとした様子で肩をなでおろした。
もしも私たちが嫌がっていたら社長にこっぴどく怒られていたのかもしれない。…それは、あまりにも可哀想だ。
「そうと決まったらコレ!明日のイベントの台本ね!台本っていっても流れが書いてある程度だからざっと目を通してもらえば大丈夫!あなたたちには新曲についてのアピールと握手会をしてもらうから頑張って!」
「新曲についてのアピール…」
感想、みたいなもので良いのかな…?
首を傾げていた私の様子を見逃さなかったREIはすかさず口を挟んできた。
「新曲はどんな感じがするか、とか…どんな場面のなかで聴いてもらいたい曲なのか…って感じだよ。そう難しく考えることはないよ」
「はぁ~、それにしても助かったわ~…もし二人からダメ押しされてたらクビにされてたのかもしれないもの」
「あ、はは…スカウト歴が長い鳴宮さんがそう簡単にクビになるようなことはありませんよ」
「えっと…イベントで、荷物とかは必要になりますか?」
やっぱりイベントと言えば新曲に合わせた衣装などで登場するのがアイドルのイベントではありきたりなものだが、それを私たちにもやらすというのだろうか?もちろんREIはどんな服装でも似合いそうだけれど、私は…なるべく露出は控えてほしいなぁ…。
「麗華の衣装はショートパンツにニーハイソックス、所々にリボンをあしらえた衣装になっているわ。その反対にREIはミニスカートにニーハイソックス、同じくリボンをあしらえている衣装になっているけれど、麗華は全体的に薄水色をベースに、REIには薄ピンク色をベースに衣装を準備しているわ」
「しょ、ショートパンツ…」
「へぇ、意外と普通っぽいですね」
これのどこが普通なんだろう。
やっぱりアイドルの価値観って一般人とはかけ離れているのだろうか?私だって一応アイドルになったけど!…まだまだ価値観は一般人って部分が強いのかもしれないなぁ。
「明日のイベントは、午後の13時から。イベント会場の近くには遅くとも午前11時には到着しているように、頼むわよ!」
「「はい!」」
「社長さんって良い人ですね。きちんと芸能界の厳しさも教えてくれて…鼓舞もしてくれて…」
「…麗華の周りにはいないの?応援とかしてくれる人」
「家族は…一応応援してくれてるけど…学校には、特にいないから…」
「そっか…」
私が虐めに遭っていることはREIは知っているから一気に空気が重たくなってしまった。さて、どうしよう…。これからボイストレーニングをするといっても気が乗らない気持ちのままではきちんと声の調子を整えるのも難しくなってしまいそうだ。
「!そうだ。新曲発表のイベントが渋谷であるんだけど、もちろん麗華にも付き合ってもらうわよ?ワタシたちユニットなんだから」
「え、ええ?!し、渋谷?!い、行ったことないよ?!」
「大丈夫大丈夫!ワタシが案内するから。っていうか、一緒に車で移動するし!」
REIはあちこちの場所でイベントをすることにも慣れているらしく多くの人が行き交っている渋谷でのイベントにもまったく動じる様子は見られなかった。やっぱり人慣れしているREIは凄い。
「そこでは実際に歌を歌う必要は…たぶん無いかな。新曲はこういう曲です~って説明と、握手会みたいなものをするだけだから安心して?」
「そ、それでも緊張するんだけど…というか、今から緊張してきた…」
「っぷ、あはは!今から緊張してどうすんの?!イベントまではまだ日数もあるからじっくり予定を組む時間はあるから大丈夫だよ」
「う、うん…」
REIが言うにはイベントがおこなわれるのは二週間後らしい。
うん、時間的には充分に機関があるし、今のうちに最低限でも事務所で働いているスタッフさんとのスキンシップや挨拶もきちんとこなせるようになければ!
イベントには私が知らない人ばかりが集まってくるだろうから当日は何も出来なく終わってしまうだろう。でも、そこはきっとREIが支えてくれる。そう信じてくれるから。
「さぁて、これからどうしよっかな~…一応新曲の譜面はあるからピアノとかで演奏してみる?歌う必要は無いけど、普段から曲調を聴くことだってとっても必要なことだし、なによりもリラックス出来る曲になれば人前に出てもそう緊張しなくなるようになるよ」
「REIは…いつもどうやって、ライブハウスのときとか…どうやってリラックスしてたの?」
「ワタシの場合は…とにかく歌うことに集中していた、かな。目の前のお客さんたちのことも視界に入らないぐらい歌に集中していけば不思議とリラックスして、練習した通りの歌を歌えるようになるから」
普段から歌のことを考えているなんてやっぱりREIは凄い。
私もiPodでREIの曲をいくつも聴いて過ごしているけれど、REIの場合はもっと多くの時間を歌と過ごしているはずだ。
「…それはそうと…今日は、大丈夫だったの?記者会見でバレちゃったんでしょ?」
「うん…。REIには不似合いだとか、いい気になるなとかは言われたけど…それぐらい何とも無いから、平気だよ…っ?!」
私が言い終わるよりも先にREIが両腕を私の背中に回してぎゅっと抱きしめてくれた。ほのかに香る良い匂いはREIの付けている香水か何かだろうか?とても心地の良い匂いだった。
「ツライ想いさせて、ごめんね…。だけど、ワタシは麗華と一緒に歌いたい…これからも迷惑掛けるかもしれないけれど…お願い、麗華の力を貸して欲しい…」
「も、もちろんだよ!そうじゃなきゃこんなこと引き受けたりしないし!」
「それもそっか。…ふふ、ありがとう麗華」
私の身体を包み込んでくれていた腕が離されると少々名残惜しさを感じたものの次にREIの見せてくれた笑顔に私の心はホッとした。
いつも学校に行けば悪戯の後片付けばかりをしてから授業に向かうという毎日。
いつからこんな生活を…そしていつまで続くのかと考えていたけれど、それはREIに出会ってからも変わることは無かった。
それでも私は逃げたり、屈したりすることはない。
虐めを仕返ししたりするようなこともしない。
今の私は、少しでもREIの力になるために歌唱力を上げることに専念しなければならないのだ。
二人で和やかなおしゃべりをしているといきなりドアが開くと同時にお姉ちゃんが飛び込んでくるように息を切らして入ってきた。
「ちょ、ちょうど良かった!二人とも一緒だったのね!REI、麗華!悪いけど、新曲発表のイベント明日になったから準備をしておいて!」
「え?!」
「ちょ、どういうことですか?!」
さすがにREIもびっくりした様子で目を丸くしながらお姉ちゃんの顔を見つめていた。
確かイベントまではかなり余裕があったはずだ。それなのに明日になるなんて準備していたらあっという間に時間は過ぎていってしまう。
「先日、記者会見があったでしょ?その勢いに乗せようってことで、イベントは前倒しになっちゃったのよ!あの、社長ー…っ…まったくこっちの予定なんて考えもしないんだから!」
どうやらイベントの日取りを早めたのは社長らしい。
でも、これはある意味、良い体験や経験を積めそうな気がする。
「お姉ちゃん…私は、大丈夫だよ。頑張ってみる!」
「麗華…。REIは?」
「ワタシも同感です。さすがに今日から明日にかけて寝る時間は限られるかもしれませんけど、思い切って勢いに乗って早めにイベントをおこなってみるのも良いかもしれませんからね」
私もREIも同じ意見だったらしくお姉ちゃんはホッとした様子で肩をなでおろした。
もしも私たちが嫌がっていたら社長にこっぴどく怒られていたのかもしれない。…それは、あまりにも可哀想だ。
「そうと決まったらコレ!明日のイベントの台本ね!台本っていっても流れが書いてある程度だからざっと目を通してもらえば大丈夫!あなたたちには新曲についてのアピールと握手会をしてもらうから頑張って!」
「新曲についてのアピール…」
感想、みたいなもので良いのかな…?
首を傾げていた私の様子を見逃さなかったREIはすかさず口を挟んできた。
「新曲はどんな感じがするか、とか…どんな場面のなかで聴いてもらいたい曲なのか…って感じだよ。そう難しく考えることはないよ」
「はぁ~、それにしても助かったわ~…もし二人からダメ押しされてたらクビにされてたのかもしれないもの」
「あ、はは…スカウト歴が長い鳴宮さんがそう簡単にクビになるようなことはありませんよ」
「えっと…イベントで、荷物とかは必要になりますか?」
やっぱりイベントと言えば新曲に合わせた衣装などで登場するのがアイドルのイベントではありきたりなものだが、それを私たちにもやらすというのだろうか?もちろんREIはどんな服装でも似合いそうだけれど、私は…なるべく露出は控えてほしいなぁ…。
「麗華の衣装はショートパンツにニーハイソックス、所々にリボンをあしらえた衣装になっているわ。その反対にREIはミニスカートにニーハイソックス、同じくリボンをあしらえている衣装になっているけれど、麗華は全体的に薄水色をベースに、REIには薄ピンク色をベースに衣装を準備しているわ」
「しょ、ショートパンツ…」
「へぇ、意外と普通っぽいですね」
これのどこが普通なんだろう。
やっぱりアイドルの価値観って一般人とはかけ離れているのだろうか?私だって一応アイドルになったけど!…まだまだ価値観は一般人って部分が強いのかもしれないなぁ。
「明日のイベントは、午後の13時から。イベント会場の近くには遅くとも午前11時には到着しているように、頼むわよ!」
「「はい!」」