光のワタシと影の私
イベント当日
私は、どうせステージ衣装に着替えるだろうということで動きやすい色の濃いワンピースを着込んで渋谷で開かれるイベント近くに来ていた。
事前にREIから『一緒にイベント会場に行こう!』というメールを送られてきていたからだ。
やっぱり私は巷に出ても地味っ子だ。
人通りの多い渋谷駅に立っていても私がREIとユニットを組んだアイドルだとは誰も知らないようで一人も声を掛けてくるようなことは無い。
すると、帽子を目深に被りショートパンツにキャミソールといった如何にも女子力の高い身なりに包んだREIがやってきた。
すると、今まで私のことを素通りしていた人たちが視線をREIから私に移していく。
「あの子がREIと歌う子?!」
「ちょっと!これから渋谷でイベントあるじゃん!行ってみようよ!」
やっぱりREIのオーラというものは凄い。
そこに立っているだけで凄い存在感というものがあるから下手すれば私だって尻込みしてしまいそうになる。
「ちょーっと~?何呆けてるのよ~?これからイベントなのよ~?」
そう言いながらREIは私の額に軽いデコピンをしてきた。
こういうところは同年代の、まだ幼さが残る女子高校生だなぁと感じるのだが事務所で次回のイベントを企画しているときやボイストレーニングをおこなっているときにはまるで別人のように真剣で他人を寄せ付けないような雰囲気を醸し出している。REI曰く集中しているから、というのだが果たして集中しているからといってもそこまで人間のオーラというものは強くなるのだろうか?
「ほらほら、早く移動しないとあっという間に人だかり出来ちゃうよ?」
REIはヒールのあるサンダルを履きながらもまったく歩きにくい様子を見せることはなく、私よりも先にどんどん歩いていってしまう。置いて行かれたらたまったものではないからスニーカーを履いた私はすぐにREIに追いついたものの本日開催されるイベント会場近くに着くと私たちは呆然と立ち尽くすことしか出来なかった。
『新曲発表!REIと麗華の生演奏を聴き逃すな!』
「ちょ、ちょっと待ってくださいよ!今日は歌う予定は無かったはずじゃ…」
暖簾にデカデカと書かれている文字に慌てた様子でREIが慌てて近くのスタッフに問い掛けていった。
すると、どうやら社長がイベントでは2、3曲披露するのが当たり前だとばかりに暖簾にそう記載する必要があったという…。
…社長は、人のことを考えてくれているのかいないのか…よく分からなくなってきてしまった。このままで大丈夫なのだろうか?
「…それに音源だって、無いですし…麗華と歌えるのは一曲しか無いんですよ?」
「あー…取り敢えず、ユニット曲を歌ってもらうことは前提にして…後はトークで良いんじゃないかなぁ?」
なんとも適当に話すスタッフはどうやら音声機器を担当しているらしく、REIが必死になって話し掛けているにも関わらずどこか他人事のように返事をしていた。
「ど、どうしよ…」
「と、取り敢えず新曲の音源は…?」
「一応持ってきてはいるけど…歌えそう?」
「が、頑張ればなんとか…」
「麗華のソロの部分だってあるんだよ?!それなのにいきなりイベントで…人前で歌うなんて…」
「だ、大丈夫!なんとかなる…よ。たぶん…」
「うわー、説得力無さ過ぎ」
「あら、二人とも揃ったわね。会場の外はファンでいっぱいいっぱいになってるわよ。きっと今日のイベント楽しみにしてるんでしょうね」
お姉ちゃん…きっと、ファンのほとんどはREIを見に来ているんだと思うよ…。
「暖簾にはあんなこと書いてあったけど、イベントを進めるのはあなたたち自身なんだから自由にやって大丈夫よ。アイドルのなかにも突然思いも寄らない行動に突っ走っていくようなアイドルもいるでしょ?パンフレットに書いてあることが全てじゃないの。それは覚えておきなさい」
「はい…」
それにしても緊張してきた。
昨晩は、今日のためにきちんと睡眠を取ってきたし、朝食+軽食としてお腹に詰めてきたし空腹や貧血などでぶっ倒れるようなことにはならないだろうけど…不安なものは不安だ。
するとぽんっと背中を叩かれた気がした。
位置的にREIの手だ。
「緊張してるのはワタシも同じだよ。取り敢えず着替えとメイク、しちゃおっか」
「うん…」
いつの間に服のサイズを測っていたのか分からなかったが、衣装のサイズは私の身体のラインにぴったりと合った。ショートパンツという足が出てしまう部分はとても恥ずかしかったけれど、なんとか我慢することにした。
そして、自分では上手く化粧が出来ないのでメイクは手馴れているREIにお願いした。REIも着替えやメイクをしたいはずなのに私のことを優先しておこなってくれる。
「…よし!麗華の場合はナチュラルメイクで、よし…ちょっと髪を弄ってみよっか」
「え、髪?!」
そう長くもなければ短くもない髪をどう弄るのか分からなかったけれど化粧台の端から取り出してきたアイロンで私の髪をクルクルと巻いていくと一気に私の姿が化けてしまった。
「うん!可愛い!」
髪は巻いてあるけれどケバすぎない程度のナチュラルメイクのおかげでごくごく自然に見えるものだから普段の地味っ子とはとても考えられないような見た目になった。
REIも化粧と髪のセットを終えると「そろそろお時間でーす!」とスタッフさんの声が聞こえてくれば二人して自然に気合を入れるように握った拳を押し当てた。
さて、イベント会場にはどれほどの人が集まっているのだろう?
一人でも、私のファンだと言ってくれる人はいるだろうか?
事前にREIから『一緒にイベント会場に行こう!』というメールを送られてきていたからだ。
やっぱり私は巷に出ても地味っ子だ。
人通りの多い渋谷駅に立っていても私がREIとユニットを組んだアイドルだとは誰も知らないようで一人も声を掛けてくるようなことは無い。
すると、帽子を目深に被りショートパンツにキャミソールといった如何にも女子力の高い身なりに包んだREIがやってきた。
すると、今まで私のことを素通りしていた人たちが視線をREIから私に移していく。
「あの子がREIと歌う子?!」
「ちょっと!これから渋谷でイベントあるじゃん!行ってみようよ!」
やっぱりREIのオーラというものは凄い。
そこに立っているだけで凄い存在感というものがあるから下手すれば私だって尻込みしてしまいそうになる。
「ちょーっと~?何呆けてるのよ~?これからイベントなのよ~?」
そう言いながらREIは私の額に軽いデコピンをしてきた。
こういうところは同年代の、まだ幼さが残る女子高校生だなぁと感じるのだが事務所で次回のイベントを企画しているときやボイストレーニングをおこなっているときにはまるで別人のように真剣で他人を寄せ付けないような雰囲気を醸し出している。REI曰く集中しているから、というのだが果たして集中しているからといってもそこまで人間のオーラというものは強くなるのだろうか?
「ほらほら、早く移動しないとあっという間に人だかり出来ちゃうよ?」
REIはヒールのあるサンダルを履きながらもまったく歩きにくい様子を見せることはなく、私よりも先にどんどん歩いていってしまう。置いて行かれたらたまったものではないからスニーカーを履いた私はすぐにREIに追いついたものの本日開催されるイベント会場近くに着くと私たちは呆然と立ち尽くすことしか出来なかった。
『新曲発表!REIと麗華の生演奏を聴き逃すな!』
「ちょ、ちょっと待ってくださいよ!今日は歌う予定は無かったはずじゃ…」
暖簾にデカデカと書かれている文字に慌てた様子でREIが慌てて近くのスタッフに問い掛けていった。
すると、どうやら社長がイベントでは2、3曲披露するのが当たり前だとばかりに暖簾にそう記載する必要があったという…。
…社長は、人のことを考えてくれているのかいないのか…よく分からなくなってきてしまった。このままで大丈夫なのだろうか?
「…それに音源だって、無いですし…麗華と歌えるのは一曲しか無いんですよ?」
「あー…取り敢えず、ユニット曲を歌ってもらうことは前提にして…後はトークで良いんじゃないかなぁ?」
なんとも適当に話すスタッフはどうやら音声機器を担当しているらしく、REIが必死になって話し掛けているにも関わらずどこか他人事のように返事をしていた。
「ど、どうしよ…」
「と、取り敢えず新曲の音源は…?」
「一応持ってきてはいるけど…歌えそう?」
「が、頑張ればなんとか…」
「麗華のソロの部分だってあるんだよ?!それなのにいきなりイベントで…人前で歌うなんて…」
「だ、大丈夫!なんとかなる…よ。たぶん…」
「うわー、説得力無さ過ぎ」
「あら、二人とも揃ったわね。会場の外はファンでいっぱいいっぱいになってるわよ。きっと今日のイベント楽しみにしてるんでしょうね」
お姉ちゃん…きっと、ファンのほとんどはREIを見に来ているんだと思うよ…。
「暖簾にはあんなこと書いてあったけど、イベントを進めるのはあなたたち自身なんだから自由にやって大丈夫よ。アイドルのなかにも突然思いも寄らない行動に突っ走っていくようなアイドルもいるでしょ?パンフレットに書いてあることが全てじゃないの。それは覚えておきなさい」
「はい…」
それにしても緊張してきた。
昨晩は、今日のためにきちんと睡眠を取ってきたし、朝食+軽食としてお腹に詰めてきたし空腹や貧血などでぶっ倒れるようなことにはならないだろうけど…不安なものは不安だ。
するとぽんっと背中を叩かれた気がした。
位置的にREIの手だ。
「緊張してるのはワタシも同じだよ。取り敢えず着替えとメイク、しちゃおっか」
「うん…」
いつの間に服のサイズを測っていたのか分からなかったが、衣装のサイズは私の身体のラインにぴったりと合った。ショートパンツという足が出てしまう部分はとても恥ずかしかったけれど、なんとか我慢することにした。
そして、自分では上手く化粧が出来ないのでメイクは手馴れているREIにお願いした。REIも着替えやメイクをしたいはずなのに私のことを優先しておこなってくれる。
「…よし!麗華の場合はナチュラルメイクで、よし…ちょっと髪を弄ってみよっか」
「え、髪?!」
そう長くもなければ短くもない髪をどう弄るのか分からなかったけれど化粧台の端から取り出してきたアイロンで私の髪をクルクルと巻いていくと一気に私の姿が化けてしまった。
「うん!可愛い!」
髪は巻いてあるけれどケバすぎない程度のナチュラルメイクのおかげでごくごく自然に見えるものだから普段の地味っ子とはとても考えられないような見た目になった。
REIも化粧と髪のセットを終えると「そろそろお時間でーす!」とスタッフさんの声が聞こえてくれば二人して自然に気合を入れるように握った拳を押し当てた。
さて、イベント会場にはどれほどの人が集まっているのだろう?
一人でも、私のファンだと言ってくれる人はいるだろうか?