光のワタシと影の私
Pride~傲慢~
一体、どこから情報が洩れたのか私に関しての情報はインターネット上を炎上させてしまうほどのものになってしまった。
谷口さんに出会ったのはほんの数時間前のことだというのに『まさかの食い違い?!麗華ソロデビューとなるか?!』私は、ソロデビューなんてこれっぽっちも考えていないというのに事務所からの電話、そしてお姉ちゃんやREIからも止まることなく電話とメールが届けられ続けた。
ようやく携帯の着信が落ち着いたのは深夜になってから。
明日は平日。
学校に行かなければならない日だ。
きっと、あることないこと質問されたうえで悪戯もされるんだろう…。
今までも学校に行きたくないという気持ちはあったが、今は今まで以上に感じたことのない嫌な気分になりながら無理やりに眠りに就いた。
「…顔色、悪…」
翌日、洗面所で顔を洗っていくと睡眠時間はきちんととったはずなのに精神的にはきちんと眠れていなかったのか今までにないほど酷い顔をしていた。目元にはうっすらと隈も出来ていたし、こんな姿で学校に行くのはさすがにマズイと考えた私はREIから余分に余っているからという理由でサンプルを貰った化粧品を使い顔を整えていくと隈も誤魔化すことが出来たし、外を出歩いても大丈夫そうだ。
「おはよう、行ってきまーす」
ごくごくとぬるくなったコーヒーを一気に飲み干し、食パンをかじりながら自宅を出て行った。まだ家を出るには早かったけれど、嫌なニュースをやっていたからそこから逃げ出したかったのかもしれない。
速報だの、なんだのということでREIがインタビューを受けている特番をしていたのだ。もちろん私がソロをしたいなんてことを思ってもいないREIも困っていたようだったし、何も応えようがないだろう。
「あ、来た来た~!」
「ほ~ら、調子に乗ってる子が来たよ~」
まだ登校時間には早いのに、私にとって今日は厄日なのだろうか。朝から嫌なものを見まくりだ。
いつも虐めの主犯になっている2、3人の集団が校門近くに立って私が校門を通り過ぎていく際にグサリと胸をえぐられるような言葉を浴びせてきたのだ。
「REIとユニットになったかと思えばソロデビュー?!」
「傲慢さもいい加減にしなよ!」
「ほんっと、REIが可哀想!」
やっぱりまだまだ世間はREIの味方だ。
私の味方になってくれるのはほんのごくごく僅か、一握り程度のファンぐらいだろう。でも、私だって今回は被害者だ。傲慢だなんて言われる立場ではない。
「だいたいアンタの歌声なんて期待してないっての!」
「REIに歌わせれば良いのに!」
「この下手くそが!」
とても女子高校生が口に出すような言葉の数々だとは思えなかったけれど、やはり虐める対象が大人しくしていればいい気になってなんでもかんでも口に出して言うのかもしれない。
あー…今すぐにでも回れ右をして家に帰りたい…。
ほとんど女子集団を無視する形で上履きに履き替えると最近は下駄箱に悪戯をされることもなかったために安心しながら靴を履き替えることが出来た。
自分の教室に向かう途中で窓ガラスに背を預けながら立っている男子生徒を見つけるとパチッと目が合ってしまったために慌てて視線を逸らすことで教室のドアに手を掛けたもののなんとその男子生徒から声を掛けられてしまった。
「あ、あのさ鳴宮…。この前のイベントすげぇ良かった!またやってくれよな?!あと…ソロデビューするってホントなのか?」
この男子も報道機関の良いように惑わされている一人だったようだ。
私はもちろんそんな気は無いから弱く首を左右に動かすと私よりも背の高い男子生徒を見上げて口を開けた。
「私はREIがいなきゃ何も出来ないよ。ソロになったら…ステージにも立てなくなっちゃう。だからソロデビューするなんてことは絶対に無いよ。安心して」
「そ、そっか…。初めて鳴宮の歌声聴いたけどさ…なんて言うか…スゲェ良かったんだよ!また、ライブやってくれよな?!」
…これは、一応応援してくれているということで良いのだろうか?
良かった、世の中嫌味を言う女子軍団ばかりだったら本当に私は家に引きこもってしまうだろう。
でも、彼は違った。あまり私と話す機会もなかったから緊張していたのかもしれないけれど、それでもまたライブを楽しみにしてくれているということは伝わったし、やっぱり私にはREIは必要不可欠な存在だと思えた。
私の周りにいる人間は嫌なヤツばかりだ…と思っていたけれど、応援してくれている人間は少ないかもしれないが、いることが分かって安心した。これもREIがユニットに誘ってくれたおかげ。私がユニットを拒んでいたらまだまだ私は虐められるばかりの毎日にうんざりしていたことだろう。
下駄箱だけでなく、私が芸能界で一躍有名になってきているということもあってか机上の悪戯書きというものもすっかり減ってしまった。特に机のなかを荒らされた様子も無いために安心して授業に集中することが出来る。
私はイイ気になっていることは決して無い。寧ろまだまだ頑張らなければならないことがたくさんあるのだ。
確かに私の歌声を評価してくれている人は事務所にもいるし、REIには持っていない歌の良さというものがあるらしいが、それで満足しているわけではない。だから傲慢になっていることもない。
基本的に歌唱力はREIのほうが上手いのだから私は周りに迷惑の掛からない範囲で発声をしてみたり、事務所のあるトレーニングルームが空いているときには積極的に使わせてもらうようにしている。自分の声もよく響くし、楽器もいくつか用意されているからきちんとした音程をはかることも出来るのだ。
…REIは誤解していないだろうか?
念のために『ソロなんて考えていないからね』とREIにはメールを送っておいた。それでも、やっぱりユニットを組んでいるパートナーだから心配に想うこともあるだろう。今日、事務所に顔を出して、REIと出会うことがあればきちんと説明しておいたほうが良さそうだ。
谷口さんに出会ったのはほんの数時間前のことだというのに『まさかの食い違い?!麗華ソロデビューとなるか?!』私は、ソロデビューなんてこれっぽっちも考えていないというのに事務所からの電話、そしてお姉ちゃんやREIからも止まることなく電話とメールが届けられ続けた。
ようやく携帯の着信が落ち着いたのは深夜になってから。
明日は平日。
学校に行かなければならない日だ。
きっと、あることないこと質問されたうえで悪戯もされるんだろう…。
今までも学校に行きたくないという気持ちはあったが、今は今まで以上に感じたことのない嫌な気分になりながら無理やりに眠りに就いた。
「…顔色、悪…」
翌日、洗面所で顔を洗っていくと睡眠時間はきちんととったはずなのに精神的にはきちんと眠れていなかったのか今までにないほど酷い顔をしていた。目元にはうっすらと隈も出来ていたし、こんな姿で学校に行くのはさすがにマズイと考えた私はREIから余分に余っているからという理由でサンプルを貰った化粧品を使い顔を整えていくと隈も誤魔化すことが出来たし、外を出歩いても大丈夫そうだ。
「おはよう、行ってきまーす」
ごくごくとぬるくなったコーヒーを一気に飲み干し、食パンをかじりながら自宅を出て行った。まだ家を出るには早かったけれど、嫌なニュースをやっていたからそこから逃げ出したかったのかもしれない。
速報だの、なんだのということでREIがインタビューを受けている特番をしていたのだ。もちろん私がソロをしたいなんてことを思ってもいないREIも困っていたようだったし、何も応えようがないだろう。
「あ、来た来た~!」
「ほ~ら、調子に乗ってる子が来たよ~」
まだ登校時間には早いのに、私にとって今日は厄日なのだろうか。朝から嫌なものを見まくりだ。
いつも虐めの主犯になっている2、3人の集団が校門近くに立って私が校門を通り過ぎていく際にグサリと胸をえぐられるような言葉を浴びせてきたのだ。
「REIとユニットになったかと思えばソロデビュー?!」
「傲慢さもいい加減にしなよ!」
「ほんっと、REIが可哀想!」
やっぱりまだまだ世間はREIの味方だ。
私の味方になってくれるのはほんのごくごく僅か、一握り程度のファンぐらいだろう。でも、私だって今回は被害者だ。傲慢だなんて言われる立場ではない。
「だいたいアンタの歌声なんて期待してないっての!」
「REIに歌わせれば良いのに!」
「この下手くそが!」
とても女子高校生が口に出すような言葉の数々だとは思えなかったけれど、やはり虐める対象が大人しくしていればいい気になってなんでもかんでも口に出して言うのかもしれない。
あー…今すぐにでも回れ右をして家に帰りたい…。
ほとんど女子集団を無視する形で上履きに履き替えると最近は下駄箱に悪戯をされることもなかったために安心しながら靴を履き替えることが出来た。
自分の教室に向かう途中で窓ガラスに背を預けながら立っている男子生徒を見つけるとパチッと目が合ってしまったために慌てて視線を逸らすことで教室のドアに手を掛けたもののなんとその男子生徒から声を掛けられてしまった。
「あ、あのさ鳴宮…。この前のイベントすげぇ良かった!またやってくれよな?!あと…ソロデビューするってホントなのか?」
この男子も報道機関の良いように惑わされている一人だったようだ。
私はもちろんそんな気は無いから弱く首を左右に動かすと私よりも背の高い男子生徒を見上げて口を開けた。
「私はREIがいなきゃ何も出来ないよ。ソロになったら…ステージにも立てなくなっちゃう。だからソロデビューするなんてことは絶対に無いよ。安心して」
「そ、そっか…。初めて鳴宮の歌声聴いたけどさ…なんて言うか…スゲェ良かったんだよ!また、ライブやってくれよな?!」
…これは、一応応援してくれているということで良いのだろうか?
良かった、世の中嫌味を言う女子軍団ばかりだったら本当に私は家に引きこもってしまうだろう。
でも、彼は違った。あまり私と話す機会もなかったから緊張していたのかもしれないけれど、それでもまたライブを楽しみにしてくれているということは伝わったし、やっぱり私にはREIは必要不可欠な存在だと思えた。
私の周りにいる人間は嫌なヤツばかりだ…と思っていたけれど、応援してくれている人間は少ないかもしれないが、いることが分かって安心した。これもREIがユニットに誘ってくれたおかげ。私がユニットを拒んでいたらまだまだ私は虐められるばかりの毎日にうんざりしていたことだろう。
下駄箱だけでなく、私が芸能界で一躍有名になってきているということもあってか机上の悪戯書きというものもすっかり減ってしまった。特に机のなかを荒らされた様子も無いために安心して授業に集中することが出来る。
私はイイ気になっていることは決して無い。寧ろまだまだ頑張らなければならないことがたくさんあるのだ。
確かに私の歌声を評価してくれている人は事務所にもいるし、REIには持っていない歌の良さというものがあるらしいが、それで満足しているわけではない。だから傲慢になっていることもない。
基本的に歌唱力はREIのほうが上手いのだから私は周りに迷惑の掛からない範囲で発声をしてみたり、事務所のあるトレーニングルームが空いているときには積極的に使わせてもらうようにしている。自分の声もよく響くし、楽器もいくつか用意されているからきちんとした音程をはかることも出来るのだ。
…REIは誤解していないだろうか?
念のために『ソロなんて考えていないからね』とREIにはメールを送っておいた。それでも、やっぱりユニットを組んでいるパートナーだから心配に想うこともあるだろう。今日、事務所に顔を出して、REIと出会うことがあればきちんと説明しておいたほうが良さそうだ。