かわいいひと
セーラー服の
私の家へ続く曲り道の影。
そこに、美少女は隠れていた。
石の塀の角からそろりと顔を覗かせて、怯えるように通りの道の様子を窺っていた女の子。
私と同じ高校のセーラー服を着ているけれど、スカートの下にジャージのズボン、その上着は腰に巻くという不思議なファッション。
そんな後ろ姿に、いろんな意味で声を掛けずらかったけれど・・・ここは私の家へ続く道だし、同じ学校の子なら、と思って軽く声を掛けた。
・・・・・・振り向いたその人は、とんでもない美少女でした。
目を丸めたままこちらを見るその子は、何度見ても可愛い。黒髪が似合う、羨ましいほどの美少女だ。
私の声に驚いたその子は、石の塀にビタッと背中を張り付けて・・・腰が抜けたらしく、背中を石塀にずりずり擦りながら座りこんでしまった。
固まって目をぱちくりさせるその様も可愛らしいけれど、このままという訳にもいかない。
こんな可愛い子を戸惑わせたままの状況から脱するために、もう一度声を掛けてみる。
「あの・・・どうかしたんですか?」
こちらを警戒するようにじっと見てくる相手に、私は首を傾げながら安心させるようににっこりと笑って見せた。
その状態で三秒ほど見つめあってから、やっと小さく口を開いた・・・。
しかし、その声を聞く前に、通りの方から近所迷惑になりそうな程の大きな声が聞こえた。
「咲耶ー!ごめんってー!」
その声に反応して、先ほどと同じように石の塀から通りへと顔を覗かせる美少女。
・・・・・・これは、もしかしなくとも・・・。
もう怪しいとか怪しくないとか、見極めている場合じゃないのかもしれない。
その考えに至った私は、急いで両手に持っていた買い物袋を左手へ集めて、空いた手でその子の手を引く。
「こっちです」
驚いたようにこちらを見る目に、声を潜めてそう言うと、目を見開いてから、一つ小さく頷いた。
家が立ち並ぶ通りの、ひとつの角を曲がって、その突き当りをまた曲がる。
奥まった道の先にある、一つの店。
そこに、私の家がある。