かわいいひと
家に入り、急いで引き戸に鍵をかけた。
ホッとしたように息をついたその人を見て、私は買い物袋をその辺のテーブルへ投げるように置いた。
「もう大丈夫ですよ」
ギュッと手を握って、私より少し背の高いその子を安心させるように見上げる。
その界隈の人が見たら歓喜するような女の子同士のシチュエーションだが、あいにく片方は一般フェイス。
目をぱちぱちと瞬かせたその子に、意を決して聞いた。
「さっきの人は、その、ストーカーですか?すぐに警察に知らせて・・・あっ、ご両親はこのことを知ってい・・・」
「あ、の・・・」
言っているうちに更に心配になってきた私の言葉を遮るように、その人は口を開いた。
初めて喋ってくれたという安心感と・・・ふと小さな疑問が私の中で浮かぶ。
なんかこの人・・・声が・・・?
「騙そうと思った訳じゃ、ないんです、けど・・・あの、ごめんなさい!」
思考の停止した私。
目の前には、黒髪ロングの髪をズルリと取って深く頭を下げた・・・美少・・・女?
「僕、男です・・・」
その態勢のまま、そっとこちらを伺ってくる。
言葉も出ないまま固まっている、そんな私の様子を見て・・・。
・・・・・・静かに、そっと頭を下げ直し、床に正座した。