君の嘘を知らなくて(仮題)
最後の授業である数学を、ぼんやり受けていると。
ブレザーのポケットに入っているスマホが震えた。
先生にバレないよう、机に隠す。
……ハイン?
<望月桜太>
…またコイツか。
溜息をつきながら渋々開いた。
<親友に嘘つくって、最低>
<最低なのはどっちよ、この浮気者>
スマホをぶん投げたいのを我慢し、返事をうつ。
最初がはろ、とかやほ、で始まってないだけ進歩したかも。
<お前、胡桃さんのこと信じてないんだ?>
<信じてるよ、親友だから。
だけど同居のことは秘密って約束でしょ>
<親友にだったら言えば?>
<胡桃は望月ファンブックの編集長だよ。
胡桃に逆らえる女子はいないはず。
逆に、胡桃の命令は絶対なんだよ>
<女子って面倒>
<同居が解消されたら言うつもり。
それまでは、誰にも内緒なの>
<好きにすれば~?>
その文面にイラつく。
だけど桜太が言うことは合っている。
胡桃は、親友なのに。