君の嘘を知らなくて(仮題)
目の前で有名な忠犬よろしくお座りをするユキくん。
尻尾を揺らす姿は、本当に愛らしく、犬らしい。
ジッと見つめていると、ふとユキくんが首輪をつけていることに気が付いた。
「本当に犬みたい」
猫でも首輪つけるんだなぁ。
あたしはヒョイッとユキくんを抱き上げた。
大人しく、あたしに抱かれているユキくん。
抱っこしていると、あたしは首輪に文字が書かれていることに気が付いた。
<名前:白井ユキ>
「……白井?」
気になってすぐ隣に書かれた飼い主名を見て、驚いた。
<飼い主:白井真幸>
名前の上にはちゃんと、しらいまゆきと振り仮名までご丁寧にふってある。
…この猫、真幸さんの飼い猫?
「……あれ?」
桜太、真幸さんの両親が動物嫌いで飼えないって言っていたよね?
どうして飼い主の所に、真幸さんの名前が書かれているの?
名前の隣には、自宅の近くにある大きめのマンション名が書かれていた。
あたしは近くまで行ってみることにした。