君の嘘を知らなくて(仮題)
ユキくんは大人しくしていたので、抱っこしたまま歩き出す。
今はまだご飯の時間じゃないのかな。
マンションは大きく目立つため、すぐにわかって辿り着いた。
10階建てほどの、茶色いマンション。
10階建てはそこまで高くないのかもしれないけど、近所が一軒家ばかりの住宅地なので目立つのだ。
マンションはオートロック式で、ポスト辺りまでなら入れた。
ポストには名字が書かれていたので、白井を探す。
<801 白井>
…ここだ。
ユキくんの首輪に書かれた住所にも、801号室と書かれていたから。
どうしてユキくんのこと、飼ってあげていないんだろう。
飼い主名も住所も書かれているのに。
桜太が餌をあげているのを見る限り、餌は貰えていないノラ猫。
真幸さんの名前に住所が書かれているにも関わらず、だ。
「……何でだろう…」
まぁ良いや、帰ろう。
そう思い出ようとしたところで、ポストに書かれたある名字に驚く。
<202 望月>