君の嘘を知らなくて(仮題)
にしても、お姉ちゃんって風太さんの前だとあんな感じにデレデレになるんだぁ。
いつもしっかりしているイメージしかなかったから、ちょっと意外な一面かも。
「にゃー」
「にゃー?」
突然猫の鳴き声がしてあたしは考えるのを止めて下を向く。
足元には真っ白な仔猫が、行儀良くお座りをしていた。
「どうしたの?迷子?」
「にゃー」
「いや、にゃーじゃなくてね?」
まぁ猫が「迷子です」なんて答えないだろうけど。
「あたしに何か用?」
「用事なんてあるわけないだろアホ」
「……へ?」
…猫が、喋った?
いやいや、そんなわけがない。
あたしは辺りを見渡すけど、人なんて見当たらない。
…確か、男の声だった。
「にゃー」
猫だけが変わらず足元に座っていた。