君の嘘を知らなくて(仮題)
真幸が事故に合った。
そう聞いた時、確実に全てが真っ暗になった。
何も考えられなかった。
何も出来なかった。
ただ教えてくれた兄貴に、ひたすら「嘘だよな!?」と言い続けた。
だけど兄貴が、「嘘」と首を縦に振ることはなかった。
『桜太くん……』
俺とは違い、女手一つで真幸を育てた幸恵さん。
真幸にそっくりなその顔が、涙と哀しみで染まっていた。
俺の中の幸恵さんは、真幸に似て、優しくて完璧な人だった。
突然前触れもなく「彼氏だ」と現れた俺のことを、驚きつつも受け入れてくれた、器の大きな人。
初めて両親と兄貴以外の年上の人に心を開いた。
『真幸、まゆき、マユキ、』
真幸の遺影を見ながら、ひたすら泣く幸恵さん。
俺はその後ろに立つことしか出来なかった。
だって、
真幸を殺したのは、俺だから。