君の嘘を知らなくて(仮題)
中学に入って数ヶ月。
俺は笑顔を作れば人が集まることを知った。
小学生の時は、人見知りで。
どうやって他人と関われば良いのかわからなくて、ただひたすら読書に没頭していた。
小学校の卒業式の夜。
テレビのバラエティを見ている時、気が付いた。
笑顔を作れば、人が集まってくるんじゃないかって。
入学式から俺は、笑顔を作るようになった。
自然に、なんて無理だった。
楽しくもないのに、馬鹿みてぇに笑えなかった。
小学生の頃本で蓄えた知識で、成績は良くて。
生まれつきの運動神経を生かして、活躍して。
小さかった声を大きくして、リーダーシップを取って。
笑顔を作って優しくすれば、男女問わず集まってきた。
そんなつまらない、計画通りの中学時代を歩んでいた時。
同じクラスだった白井真幸に話しかけられた。
同じマンションに住んでいる、芸能人並みに可愛い女子。
小学校も同じで、その存在は知っていた。
男子からは好かれ女子からは嫌われるけど、実は男子もいざと言う時には守ってくれない。
いわば、高根の花。
別に好きでも嫌いでもない、どうでも良い存在だった。