君の嘘を知らなくて(仮題)
俺はこっそり、すでに真幸宛てのプレゼントを買っていた。
プレゼントを渡された時、一緒に渡そうと思っていたんだ。
そのプレゼントは渡されぬまま、真幸は事故で死んだ。
俺は勿論ショックを受けた。
だけど誰よりも傷ついたのは、真幸の母・幸恵さんだった。
女手一つで育てた、成長を見るのが何より楽しみなの、と笑った幸恵さん。
真幸をよろしくね、と幸せを願っていたのに。
『ねぇ桜太くん。
真幸がお見舞いに来てくれたのよ』
真幸を失った幸恵さんは、病気になり倒れた。
両親がすでに死んでいて、真幸以外知り合いのいなかった幸恵さんにとって、俺は唯一残された存在だった。
幸恵さんが入院した病院に見舞いに行くと、言われた。
俺は驚いて病室を飛び出し、顔見知りになった幸恵さんの担当医に事情を話した。
『わかりやすく言うと、幸恵さんは娘さんを失い、心を病んでしまった。
娘さんが今でも生きていると、錯覚をしてしまっているのですよ』
『治るんですか』
『本人次第、です』
真幸が、生きている。
幸恵さんの中で、今も。