君の嘘を知らなくて(仮題)
『……幸恵さん。
真幸はもう、亡くなっています』
1度幸恵さんの病気が治り、家に行った時。
真幸が事故で亡くなっていることを俺は伝えた。
『何を言うの、桜太くん』
幸恵さんは不気味なほど、にっこり笑った。
『あなたの隣で、笑っているじゃないの』
『……真幸?』
『桜太くんのこと、好きなのよ。真幸は』
俺はそれ以上話せず、家に帰ろうとエレベーターを待っていた。
歩く気力など、残っていなかった。
やってきたエレベーターに乗っていたのは、1度だけ見たことある男性。
『……おじさん』
名前は知らない、幸恵さんの離婚した旦那さんで、真幸のお父さん。
真幸のお葬式で、会っただけだ。
『……望月桜太くんだね。話がある』
俺たちは近くの喫茶店に入った。