君の嘘を知らなくて(仮題)








「……なぁ、ユキ」





真幸の眠る墓が見える、夕焼け公園。

俺はベンチに寝転がり、傍で座っているユキに話しかけた。





「どうしたら俺、真幸に会えるかな」




ユキは鳴かず、ジッと俺を見つめていた。




「ユキは会いたくねぇの?
お前を助けた、飼い主に」




真幸と付き合っていないけど、同じマンションだから一緒に帰っていたある日。

車の甲高いブレーキ音が聞こえ、俺たちは何事か立ち止まって見た。

ブレーキをかけた車がどこかへ去っていく。

そして道路に残されたのは、出血する猫。



急いで近所にある動物病院に行ったことで、死は免れた。

ノラ猫だった、小さな仔猫。

幸恵さんと揃って猫好きだった真幸は、仔猫にユキと名付け、自宅で飼うことになった。



幸恵さんもユキを可愛がっていたけど。

人見知りのユキが懐いたのは、真幸と俺で。

真幸の死後、ユキは白井家に寄りつかなくなった。

本当は俺が飼ってやりたかったけど、兄貴が猫アレルギーで。

ユキは再びノラ猫に戻った。




それでも、よくユキと共に来ていた夕焼け公園に、ユキは現れて。

俺はスーパーで餌を買い、飼えない代わりにユキに餌をあげるようになった。







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