君の嘘を知らなくて(仮題)
「桜太!桜太!どこにいるの!?」
走りながら叫ぶ。
近所迷惑なんて気にしなかった。
今だけは許してほしかった。
……どうしてこんなに必死になっているんだろう。
意味わからないよ。
自分で自分の行動がわからないよ。
よろしくって言われたから?
風太さんの頼みだから?
「意味、わからないよ。……桜太」
頭の良い桜太ならわかる?
あたしのこのわけわからない気持ち。
名前があるのなら、教えてほしい。
だからきっと、あたしは探している。
答えが、知りたいから。
「……アヤメ?」
呼ばれてハッと振り向く。
聞き慣れた、彼女の声に。