君の嘘を知らなくて(仮題)
「ギリギリセーフだね、アヤメ」
「お…おはよう……」
教室にギリギリ入るなり息を吐いたあたしを見て苦笑するのは、
友達の胡桃(くるみ)。
高校入学と共に染めた茶色い髪をランダムに巻いていて、なかなか可愛い女の子だ。
「ていうかアヤメどうしたの?その背中」
「背中?」
「靴の跡と…何これ、猫の足?」
「……アイツらだ」
あたしは胡桃に次の休み時間話すことを約束した。
チャイムが鳴り、胡桃が自分の席に戻ったから。
あたしは窓際の席なので、
担任の話すつまらないホームルームを聞き流し、ぼんやりと外の景色を眺めていた。
空は青く、校庭に生える木は桜を終え、新緑の季節となっている。
窓は開けていないけど、開けたらきっと気持ちの良い風が入ってくるんだろうな。
というか背中どうしよう。
運が良く1番後ろの席だから良いけど。
誰かに見られたら最悪だった。
そういえばアイツは一体誰だったんだろう?
声は聞いたから、顔はわからないけど聞けばわかるはず。
クリーニング代、とまではいかないけど、一言謝ってもらいたいよね。