君の嘘を知らなくて(仮題)
「桜太」
「……アヤメ。
お前は…アイツに似てるよ」
あんな可愛い人と…あたしが?
「似てるよ。……本当に。
だから……」
一拍間を置き、桜太はあたしをゆっくり離した。
「お前の気持ちには答えられない」
わかりきっていた。
彼の愛する人は、決まっているから。
「……気にしないで。
聞いてくれて、ありがとう。
……帰ろう?」
あたしは涙を拭き、立ち上がった。
「友達では、いてほしいな」
キミの哀しみを全ては拭えないかもしれないけど。
あの子に似ているあたしを、傍にいさせて。
「……ああ」
全てを知る小さな白い仔猫が、
月が見えない夜、小さく鳴いた。