君の嘘を知らなくて(仮題)
「……おじさん、誰かと一緒にいる所、見たことあるか?」
自分の母校の教科書を見ていた兄貴が、振り向く。
「ないよ。
おじさんって、1人暮らしでしょ?」
「……1人?」
「うん。
本人に聞いたわけじゃないけど、誰かと一緒に暮らしているとか聞いたことないから」
「……そうか」
おじさん…1人暮らしなのか?
「どうしたの桜太。
やけに今日おじさんについて聞くね」
「……明日、もしかしたら遅く帰る」
「何?また女の子たちに勉強会に誘われているの?」
「……そういうわけじゃ、ねぇけど…」
「そう。
聞かないけど、帰る時は連絡してね。
椿さんも待っているから」
「ああ。早めに帰るよ」
「……」
兄貴は何か言いたげだったけど、頷いて部屋を出て行った。